「ハチミツ」(準備稿⑦)

(A)の働いているのとは別のオフィス。


(A)は上司と、顧客のオフィス/会議室にて打ち合わせをしている。
ピリピリしたムードが漂う。
テーブルの上には書類が広がっている。お茶も乗っている。


顧客①は手にしていたドキュメントをバサッとテーブルの上に投げ出す。
顧客① 「これだと、全然要件満たしてないんですけどね。
     ちゃんとレビューしてんですか?社内で」
上司と(A)深々と頭を下げて、「申し訳ありません」
顧客② 「こんな性能だとすぐ動かなくなるじゃないですか。
     2年後とか3年後のこと、考えてるんですか?」
顧客① 「おたくを選んだの間違いだったと思ってますよ。私としては」
(A)慌てて取り繕う。
  「申し訳ありません。ここはあくまで書き間違えで、正しい数字は」
顧客② 遮って、「間違った資料を平気で持ってくるな!!」

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路上。(顧客のオフィスの外)


上司、(A)トボトボと重い気持ちで歩いている。
上司が立ち止まり、(A)も立ち止まる。


上司、激昂して「おまえ、なんだあのいいかげんな資料は!!」
(A)「だから、昨日の夜、事前に見といてくださいと言ったじゃないですか」
上司 「つべこべ言うな!!」


上司歩き去る。
(A)立ち止まったまま、前に足を踏み出すことができない。

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小さな公園。オフィス街にあるような、ベンチと街路樹だけ、みたいな。


1人ぽつんと(A)がベンチに座っている。途方にくれている。
クマが現れて、隣に座る。


(A)「なあ、どうしたらいいんだろうな」


クマは立ち上がり、ベンチの上にあった(A)の鞄を取り上げると、
ごみを捨てるかのように地面に放り投げる。そしてまたベンチに座る。
そして地面の上の鞄をまた拾い上げて、(A)に手渡す。


(A)「辞めればいいってこと?」


クマは反応せず、(A)を見つめ続ける。

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※場所未定。どこかの店、とも思ったが、静かな場所がいい。
(レストランだろうとバーだろうと喫茶店だろうと音楽が鳴ってるだろうから、NG)


(A)と(B:恋人、会社の同期)向かい合って座っている。


(B)「今日かなり怒られたんでしょ?」
(A)「うまくいかないね」
(B)「そういう日もあるよ」
(A)「・・・クマがさ、その後出てきたんだよ。でさ、会社なんか辞めちまえだって」
(B)「・・・そんなこと言ったの?」
(A)「いや、そんな身振りで。・・・でさ、そうかもな、って思ったよ」


(B)「・・・辞めたら、どうすんの?いつも言ってるけど。
    小説家になるの?なれるの?どうしたいの?
    そろそろさ、決めなきゃいけないよ」
(A)「(B)からすれば、僕はどっちを選んだらいいんだろう?会社員と小説家と」
(B)「そんなの、自分で決めることでしょ?」
(B)あきれたように、「どうして、いつもそうなの?」


(B)は機嫌を悪くして、出て行く。


(A)が一人取り残される。