「Sprout」

ようやく小説を書き終えた。
わざわざ会社を休んで、朝7時に起きてラストシーンを書いた。
長かった。4月から書き始めて5ヶ月か。
250枚になった。これから2・3ヶ月かけてひたすら手直し。


つらい作業だった。
でも、書き終えて今、満ちたりた気持ちになっている。
それと同時にここまで来れてほっとしている。
何年かぶりに長編を完成させることができた。
それに、今回初めて自分が望むレベルに達した作品となった。

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昼前に新宿に出て、L-Breathと東急ハンズで今回の旅行用のバックパックを探す。
必ずしも必要ではないのだが、
一目見てものすごく欲しくなったものがあったら買うつもりでいた。
良くも悪くも特にそういうものは見つからず。


渋谷に出る。平日だというのに、ものすごい人手。学生たちは夏休みだからか。
カツ丼が食べたくて食べたくて仕方なかったので、
家を出る前に「渋谷 カツ丼」で検索して最初に引っかかった店に入った。
夜はバーでランチタイムにカツ丼がメニューにありますという店。
名物だという豪華なカツ丼は確かに大きくて、体育会系の学生が挑戦するような類のやつ。
カツが今ひとつだしタレもしょっぱいということで
途中から腹いっぱいになって食べるのも嫌になってるんだけど、
食べ物を残すのは嫌なので無理やり完食する。
当分カツ丼は見たくもない。
こんなことなら「パク森」でカレーを食べればよかった。


渋谷という町は実に不思議で、渋谷で食べてこれはうまい、
というものに出会ったことがほとんどない。
以前日記にも書いたけど、学生時代に Quatro で Yo La Tengo のライブを見た後で
大学の先輩サイノウさんに連れられて入ったとんこつラーメン屋。
あと、「ムルギー
チェーン店を入れていいなら「一蘭」ぐらいか。
入ってみて雰囲気のよかったバーや居酒屋ならばいくつかあるが、
食べ物として「うまい!」という経験を与えてくれるような店は見当たらない。
入ってみようという気が起きる店もない。反対側の宮益坂の方もそう。
渋谷という街の上っ面しか知らないからかなあ。
センター街なんていろんな地域いろんな国の料理を提供する店が乱立してるものの
どれもこれもチェーン店ばかり。

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映画が始まるまでの間、パルコの地下のアプレ・ミディの店でCDを眺める。
(僕は何気に Suburbia Suite なんかも持ってたりする)
CDを買ったらサマーセールとかで橋本徹セレクションによるCD-Rをもらえた。

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ライズ X で「Sprout」という映画を見る。
ライズ X は初めて入ったが、この建物前はなんだったのだろう?
ものすごく狭くて、地下2階から入って客席は地下1階と2階に分かれている。
スクリーンも小さい。
普通映画館って水平方向に空間が広がっているものだが、
垂直方向の方が長い映画館って初めてだ。


「Sprout」は一言で言うとサーフィン映画。
Jack Johnsonの「The September Sessions」に感銘を受けたばかりなので、
サーフィン映画、波とサーファーだけしか出てこなくて
何のストーリーもなくずーっとサーフィンをしているだけの映画を大画面で見たいと思っていた。
頭を空っぽにしてキラキラと輝く波しぶきを眺める。ある意味癒し系。
ヒーリングとかスピリチュアルとかそういうやつ?
その波間を神業的なテクニックを持つ高名なサーファーたちがスーッと通り抜けていく。
「ああ、いいなあ、すごいなあ、はー」とため息をつきながら見る。
そんで夕暮の映像が出てきたり、サーフィンの舞台となる世界各地の風景が出てきたり。
波のある場所へと向かう。波を待つ。波に乗る。全編ただそれだけ。


監督のトーマス・キャンベルについては、
昨年再発された Tommy Guerrero の2枚目のアルバムに短編の DVD が特典としてくっついていて、
それを見て「結構いいね」と思っていた。
若者たちの何気ない日常生活を切り取って無造作に並べただけのもの。
飾り気がないのに、メロウで。Tommy GuerreroJack Johnson の音楽によく似ている。


ぼけーっとなって映画を眺めた。そのうちに、余りの心地よさに寝てしまった。


サーファーっていいなあ。素直にそう思う。
サーフィンはしない・できない人間だけど、その精神性に同調したいなあと思った。
例えば、トム・ウェグナーという人が出てくる。
僕はこの映画を見て初めて知ったんだけど、その世界では神様のような人なのだろう。
大会でオーストラリアを訪問した際にラジオのインタビューを受け、
その時に知り合った地元の女性DJと結婚。オーストラリアに移住。
現在は桐を素材とした昔ながらのサーフボードを週に1本作るのがメインの仕事。
スタイロフォームとかウレタンフォームが主流なので
 こういうハンドメイドで木製だととんでもない値段がつくんだろうな)
幼い子供たちと一緒に今も波に乗っている。そんな生活。
まさにスローライフ


うまれついた環境ってのもあるんだけど、自分はサーフィンというものに出会った、
心の底から好きになって、誰よりも練習した、波と向き合った、
そして世界の頂点に立つ。そこから先はガツガツしない。
成功した今でも波に乗ることが何よりも楽しい。
これぞ「人の生きる道」と門外漢の僕は思ってしまうんだけど、
現実はそんな甘っちょろいものではない?


南国に生まれたかった。。。