回送電車

朝6時に起きて、竹芝ではなく常駐先へと向かうと、
朝7時ごろ神保町の都営三田線のホームにて
ちょうど回送電車が走っているところに出くわす。
人気のまばらなホームを、無人で中が真っ暗な地下鉄がのっそりと走っている。
不気味と言えば不気味だけど、幻想的と言えば幻想的と言えなくもない。


回送電車はそのまま無言で走り去り、トンネルのかなたへと消えていく。
「どこに行くんだろうな?」と思うときがある。
もちろん、答えはわかっている。
どこかの広々とした敷地のはずれにあるせせこましい車庫の中だ。
その日の役目を終えて、点検のために帰っていく。


それでも、「どこに行くんだろうな?」と思う。
どこか、この世には存在しないどこかへと
ゴトゴトと音を立てて向かっていきそうな気がする。
ドアを開けて乗り込んで1人きり暗闇の中に座っていたら、
そこに連れて行ってくれそうな気がする。


どうかこの僕を、連れてってくれよ。

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「回送電車」と打とうとしたら、「回想電車」と出てきた。
電車を回想する。
回想する電車。


様々な人々の様々な思い出を乗せて走る電車。
電車自身がその思い出の数々を振り返りながら、日々無言で走り続ける。

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銀河鉄道999」でも「銀河鉄道の夜」でもよいが、
電車がふわりと浮き上がって
星の浮かぶ夜空へと向かっていく光景を僕は今なぜか、思い描いた。