自動公園

真夜中の無人の公園。
人気のない広場。噴水。取り囲む雑木林。
今生まれたばかりのような、汚れひとつない遊具。
入り組んだ図形を描く、園内の案内図。
まっすぐな遊歩道が地の果てまで続く。
曲がりくねったサイクリングロードと交差する。
整然と並べられた自販機のボタンが赤に青に緑と点滅する。
一定の周期に基づいて緻密なパターンを描く。


朝を迎える。
公園はこの世界を侵食して常に広がり続ける。
都市を、郊外を、海辺を、地の果てを、全て飲み込み尽くす。
やがていつの日かこの星は単一の公園だけとなるだろう。
無人の公園、訪れるもののいない公園。


芝生は無限の生命力をもって瑞々しく成長を続け、
それらが一斉に、一瞬にして刈り取られる。消滅する。


あちこちに塔が建てられる。
部品たちが自ら増殖を繰り返し、空の向こうに届こうとする。
この世界のあらゆる物事を記録し、記憶するためのモニュメント。
塔の内と外、全ての表面が微細な文字の群で刻み込まれ、覆い尽くされる。
この世にかつて存在した全ての言語が組み合わされて。記号や図表を散りばめて。
映像と音声も可能な限り拾い集めて再構成を行なう。
とてつもない規模で生み出された、虚構。


百万年後。
異星から船に乗って訪れた子供たちが公園の中で遊ぶ。
穏やかに輝く太陽の下で、散らばって、歓声を上げて。
塔の中を駆け上がって、てっぺんで夜空の星をつかもうとする。
傍らのスクリーンでは、はるかな昔この地上を生きていた人類たちの歴史が
残酷なまでに切り刻まれて、圧縮されて、放映される。
人類たちの執り行う様々な行為。そこに伴う叫びと囁き。
異星の子供たちは見向きもしない。


そして子供たちはまた船に乗って去っていく。
公園は無人となる。
噴水からは絶え間なく水が流れ、自販機のボタンが点滅する。
芝生は刈り取られる。
塔のいくつかが崩壊し、また新しい塔が生まれ出る。
その度ごとに人類の歴史がまた別なものへと書き換えられる。