山本直樹「RED」

最近山本直樹ばかり読んでいる。
何がきっかけだったのだろう?
そうだ、部屋の中を片付けていたら「ビリーバーズ」が出てきたんだった。
読み返してみて、「ああ、これってやっぱ名作だなあ」とため息が出た。


以来週末は、本屋で探して買って読んでる。
最新作だと「RED」や「堀田」
ちょっと前の短編集だと、映像化された「テレビばかり見てると馬鹿になる」とかね。
絶版になった「僕らはみんな生きている」も amazon で中古を取り寄せた。


「堀田」がエロしかない、だけど前衛的で幻想的な作品だとしたら、
全共闘時代を描いた「RED」これ、対極にあって、かなり本気だね。
あれだけ女の子が出てきてるのに、お得意の「やる」シーンが出てこない。
2巻になってちょっと出てきただけ。


即物的な、かつ散文的なエロが描かれた短編もいいけど、
やっぱこの人は長編でその文学性が炸裂する人なのではないかと。
(「ありがとう」「僕らはみんな生きている」「ビリーバーズ」)
そんな意味で「RED」がどこへと向かうのか。目が離せないね。
人は何のために生きるのか。生きているってどういうことなのか。
勝ち目のない争いの中で逃げ延びて生きていく者。命を失う者。
いつになくストイックな筆致に読んでて背筋が延びる。


「RED」の2巻の巻末に山本直樹押井守の対談が収録されていた。
押井守学生運動の時代に、高校生としての兵隊であったという。
そういうことを入口に、対談が進む。


以下、その最後の方から引用。


「何かのテレビでやっていたけど、
 電話に触れたことのない人間が世界の人口の60%だか80%いるそうなんだよね。
 ネットと携帯が世界のすべてだなんて思い込むのは、大きな間違いだってことだよ。


 (中略)


 じつは、電話よりも銃を手にした人間のほうが多いのかもしれない。
 それが世界の実相であってね。
 少なくとも第三世界に関していえば、
 携帯を持った人間よりもAK銃を持った人間のほうが多いに決まっている。
 携帯もAKも、コミュニケーションの道具として一定の力を持っている」