『スプートニク』

4・5年前に青森市の成田本店で見つける。
大型の本で、表紙に宇宙飛行士と打ち上げられたロケット、月面から見た地球。
かっこよくて思わず買ってしまった。
(今でも成田本店で1冊売れ残っている)


http://www.amazon.co.jp/dp/4480860525/


時代は米ソ冷戦真っただ中の60年代。
どちらが先に月へと辿り着くか、国の威信をかけて激しい競争が繰り広げられていた。
結果1969年にアメリカがアポロ11号を月面に送り込むことに成功して圧倒的な勝利を遂げたが、
1961年のユーリー・ガガーリンが人類初の宇宙飛行を行ったように、
60年代前半まではソ連の方が二歩も三歩もリードしていた。


主人公は幻の宇宙飛行士イワン・イストニチコフ。
1968年、ソユーズ2号に犬と共に搭乗するも宇宙空間で謎の失踪を遂げる。
船体には隕石がぶつかった形跡があった。
アメリカの妨害工作なのか、致命的な装置の故障なのか、それとも閉鎖された空間で精神が崩壊したか・・・
ソ連政府はこのソユーズ2号は無人で自動操縦されていたと発表、イワン・イストニチコフは抹殺された。
妻は強制隔離され、宇宙飛行士たちの集まった写真からも消去された。
著者ジョアン・フォンクベルタは1993年、サザビーズでの「ロシアの宇宙計画史」というオークション
(その出品物の多くはスミソニアン博物館に買い取られた)
にて何気なく購入したソユーズ3号のパイロット、ゲオルギー・ベレゴヴォイの書類の中に
偶然イワン・イストニチコフの生の痕跡を見つけ、それをきっかけに調査が始まった。
妻イリーナの少女時代の写真、バイコヌール宇宙基地の地図、ベレゴヴォイの供述、
イストニチコフが管制センターと通信で行ったチェスの記譜、イストニチコフのスケッチ、
通信記録、ソユーズ2号の見取り図、犬用宇宙服の素案・・・、
発掘された様々な素材を元にイワン・イストニチコフの人生と
ソユーズ2号でいったい何が起きたのか?」を再現する。


帯には超ノンフィクションとあって、本の最後には小さくフィクションとある。
どうやら全て作り物のようだ。
だけどとてもよくできていて、怒る気にはならない。むしろ感心させられる。
ものすごく手の込んだ、鮮やかな嘘。思わず騙されてみたくなるような。


写真などの資料も充実していて、それを見ているだけでも十分楽しい。
60年代のロシア。60年代の宇宙開発。
ソユーズの中や宇宙基地に設営された発射台の写真など、見てるととてもワクワクする。
手元に置いて、時々眺めたくなるね。


なお、中で触れられているんだけど、
1960年、ボストーク5号に乗せられて宇宙空間に飛び立った有名なライカ犬の話、
これ実は作り話であって、
打ち上げに際してカプセル内の温度調節がうまくいかなくて即焦げ死んでいた、
しかし犬の替えはいくらでもいて、見る人も区別がつかないだろう
ということで地上から代役の犬の映像が送られていたという。
この本自体の真偽があやふやなのでどこからどこまでが実際の出来事なのか判別付かないんだけど、
なんとなくほんとっぽい気がする。
1968年のガガーリン事故死も陰謀によるものだとかね。


トム・ウルフの『ライトスタッフ』も面白かったなあ!
こちらはアメリカ側の、正真正銘のノンフィクション。
宇宙飛行士に選ばれたパイロットたちの明暗を描く。
小さい頃に宇宙に興味を持った者として、
1960年代のソ連アメリカの宇宙計画に関するものは何を読んでも興味深いね。
 

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