那覇一泊ツアー その5(沖縄プロレス)

牧志の駅を出て、「沖縄プロレス」の会場の入ったビルを探す。
ビルの5階。ただでさえ小さなビルばかりなのに
国際通りも7・8階より高い建物を見かけない)
その5階ともあればとてつもなく小さい場所で行われているんだろうな。


夜になって通りは人通りが賑やかになる。若い子ばかり。
三線を抱えた若者が居酒屋の客引きのために立っている。
オリオンビール1杯100円なんて店もある。
多くの居酒屋・飲食店にて夜、沖縄民謡の演奏がなされる。
ない方が少ないんじゃないか? と思えるぐらい。
もうそれぐらい歌い手や奏者が大勢いるのだろう。
よほど名の通ってない限りそれだけで食ってる人は少なくて、
小さい頃より楽器は手にしているけど
昼間は別の仕事をしてっていう人が多いのかな。
これら夜通し歌ったり奏でられてるってことはなくて、
大物なのか名前が出ている人のステージは19時と21時だとか何回かに分かれていた。
店によっては即に三線二本と歌い手といった編成で盛り上がっているのが外から見えた。
沖縄民謡に限らず、アコギ弾き語りの若者の出演する店もあった。
沖縄インディーズ系に繋がっていくのだろう。


19時、歩き回った末にようやくビルを見つけて
(昼に食べた鉄板焼きの「翆」のすぐ隣だった)
エレベーターで5階に上がったら試合開始20時に対して、開場は19時半だという。
閉まったドアの向こうからはドタンバタンとリングの上で練習する音が聞こえた。


少し暇ができて国際通りをまたブラブラする。
歩いていて気になった市場本通りに入ってみる。
小さな店がひしめいていて、アジア的熱気が感じられそう。
入り口にあった御土産物の店にドラゴンフルーツが売られていて、
小ぶりのものだと1つ100円。その場で食べられるというので切ってもらう。
身は大きいとゲンコツサイズ。
赤紫色で毒々しい色をしていて、
周りの花びらが咲き誇るようにめくれ上がっている。
食べてみるとキウイのようだった。中にゴマのような黒い種も入っていたし。


沖縄プロレスへと引き返す。
エレベーターを上って再度5階へ。
ホテルで見たと言えば1,000円引きということで、自由席2,500円で見ることができた。
筋金入りのファンは指定席を予約までしていた。
この指定席はリングサイド正面にパイプ椅子が10個ほど並んでいるだけ。
自由席はリングの横、右側と左側。早めに入ったので最前列の席となった。
全部で入れるのは70人ぐらいかな。ジムよりも小さい。
水曜以外は毎晩、この自前の会場で試合を行っている。


沖縄プロレス」とは、ホームページを見ると
「沖縄に新名所誕生!!笑って・飛んで・闘って
 家族で楽しめる極上のバトルファンジー!」とあるように、
http://okinawa-prowres.jp/
笑えるファンタジーとしてのプロレスなんですね。
真剣勝負のストイックな格闘技ではない。
みちのくプロレスを経て大阪プロレスを立ち上げたスペル・デルフィン
脱退後、2008年に旗揚げ。まだ2年目という若い団体。
(なお、なぜ沖縄かというとスペル・デルフィンの妻が早坂好恵で、沖縄出身だからか)


全員がマスクをしていて、レスラーの名前も
「怪人ハブ男」「ミル・マングース」「シーサー王」「グルクン・ダイバー」
「めんそ〜れ親父」「ヤンバルクイーンナ」「ゴーヤーマスク」など
コスチュームもまたそれらしく、沖縄由来のキャラクターとなっている。
なんだかものすごくパチもん的。まずは笑って! という感じ。
でも全員が全員沖縄出身ではなくて、元大阪プロレスのレスラーが多いのかな。


グッズ売り場では所属選手のTシャツやサイン入りのブロマイドが売られていた。
僕はパンフレットを買った。
読むと「出張MAP」のページに「ジャスコ那覇店」説明に「定期的開催」とあったのが泣ける。
仮面ライダーショーを思い出す。
他にも「航空自衛隊エアーフェスタ」や「やんばるの産業祭り」などイベントに参加。
地域密着型というかこういう町づくりへの関わり方もいいなあと思う。


本来はビールの売り子の女の子がいるそうだが、この日は休み。
後輩が外に出てコンビニにオリオンビールを買いに行く。


トイレに入っているとマスクをした選手が普通に入ってくる。
試合開始前もリングと控え室の間を盛んに出入りする。
売店に座っている若者もそうだったし、男性スタッフは皆マスクをしていて選手と区別がつかない。


この日、メインの選手である「怪人ハブ男」は東京遠征のため不在。


20時を過ぎて試合開始。
まずはめんそ〜れ親父、シーサー王ミル・マングース、エイサーエイトによるユニット
「親父倶楽部」が沖縄民謡の演奏を2曲披露。
エイサーエイトがその名の通りエイサーの太鼓を叩き、親父が謡って
シーサー王ミル・マングースが1曲ずつ三線
シーサー王の腕前はなかなかだったが
ミル・マングースは超初心者で弦を押さえるのも覚束なくてハラハラした。
でも、こういうサービス精神がいいよね。
観光名所を目指すと言い切るだけあって、ベタだけどそつがない。
(最初、会場に入ってリング内にマイク2本とパイプ椅子が置いてあるのを見て、
 マイクパフォーマンス用と凶器の準備かと思った)


3試合あって、1試合目は
めんそ〜れ親父 vs グルクンダイバー
青コーナー、赤コーナーとあったがどちらも同じ控え室のドアから出てくる。
親父は最前列に座る僕ら1人1人にタッチしていく。他の選手もそうする人たちが多かった。
めんそ〜れ親父は名前からして色モノ。頭には沖縄ソバを乗せている。
最弱のはみ出しものかと思いきや試合前に民謡を歌うなどこの沖縄プロレスのキーマンというか
精神的なリーダーのような存在であった。
スペル・デルフィンが沖縄にプロレス団体を作りたいとなったとき、
最初に相談したのは彼だったのではないか。
リングに上がると、応援する選手のカラーの紙テープを投げようということで何本か空に舞った。
それら片付けて、試合開始。
・・・ゆるい。むちゃくちゃゆるい。大学のプロレス研究会並み。
暗黙の段取りだけでコーナーポストに追い詰めたり、ロープまで走ったり。
投げるのも組み合うのも
ああこれ間合い外してるけど無理やりやってんなあという瞬間が多々あった。
振り付けでやってます、というような。冗談でしかない。
とりあえず場内に飛んでみたり、
親父は(たぶん毎回やってるんだろうけど)ロープの上を綱渡りする芸も披露。
それがツカミの時間が終わったのか、後半になってくると少しずつ本格的になってきて、
スピードも組み合う精度も増す。
思わぬ空中戦になったり大技が繰り出されたりして
見ててこちらも「おおー!!」と歓声を挙げて笑顔になる。
でもまあ結局はお約束どおり親父が勝利。


2試合目はタッグマッチで
シーサー王&エイサー8 vs ミル・マングース&ヤンバルクイーンナ
ヤンバルクイーンナは沖縄プロレス初の女子レスラーで、
小柄なのに太ももが僕よりも太かった。相当鍛えてんだな。
シーサー王は巨漢で見るからに強そうだった。試合前にパワーストーンをかざす。
ここで最も興味深かったのはミル・マングース
通称「1000のハブを噛む男」なんだけど、ダントツのスピード感で技巧派。
もっとちゃんと見てみたくなった。


休憩時間が挟まる。
独自の携帯サイトがあって、会員登録お願いしますと呼びかけて回る。
地道な営業が行われる。


3試合目は全員がリングに上がってバトルロイヤル。
全員でバックドロップ、全員で数珠繋ぎになってヘッドロックをしたり。
お約束過ぎるんだけど腹抱えて笑った。下手なお笑い番組よりよっぽど面白い。
これは見るに値する。沖縄の新名所にふさわしい。
久々に僕、心の底から夢中になって笑ってた。


最後は主な選手が揃ってリングサイドで記念撮影。
サービス精神旺盛すぎる。
もちろん僕らも撮ってもらった。
めんそーれ親父と握手
沖縄プロレス」いいね。
今回一番の収穫。台風が来なかったら、出会うことはなかった。