こんなサントラを持っている その4

早いもので4回目。
最近は買った新譜も聞かず、サントラを聞く毎日。


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□『Car Wash』


ロサンゼルスの洗車場を舞台にした群像劇風コメディー。
ガソリンスタンドにあるようなセルフサービスじゃなくて、
係りに分かれて車を洗うんですね。
ホースだったり、洗剤だったり、磨いたり。
明日を夢見る黒人たちや、落伍した白人たち。
人生いろいろあるけど楽しく仕事して1日を過ごそうとする。


1976年の作品で、コメディーに相応しく軽快なソウル&ファンクが聞いてて心地よい。
僕は一時期、iPhoneに入れてたびたび聞いてた。映画音楽を超えて秀逸なコンピ。


ポインター・シスターズが車を洗いに来た本人として登場し、1曲披露。
このサントラにも入ってる。


脚本のジョエル・シューマカーは後に、
1980年代の青春映画の金字塔『セント・エルモス・ファイアー』を監督。
(いわゆるブラット・パックの代表作)
近年は『フォーン・ブース』や『ヴェロニカ・ゲリン』など。


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□『The Mission』


18世紀半ばを舞台にした歴史劇。南米の奥地にて
命がけで布教活動を行なうイエズス会の敬虔な神父たちと粗野な奴隷商人の邂逅。
ロバート・デ・ニーロジェレミー・アイアンズリーアム・ニーソンらが出演。
1986年のカンヌでパルムドールイグアスの滝から落下するシーンが忘れられない。


音楽はエンニオ・モリコーネ。映画音楽界の巨匠として
『荒野の用心棒 』『ニュー・シネマ・パラダイス』から聞いたことないタイトルまで
実に様々な映画を手掛けていますが、


キャメロン・ディアスケイト・ウィンスレット
ジュード・ロウジャック・ブラックの4人が主演で共演した『ホリデイ』にて
ジャック・ブラック扮する映画音楽家
レンタルビデオケイト・ウィンスレットを誘う場面で
「これまでで最高のサントラはこれだ!」と、
この『ミッション』のパッケージを差し出すんですね。


映画の壮大なテーマに相応しい、
雄大な雰囲気の曲が舞台となったパラナ川をたゆたうように流れる。


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天井桟敷J・A・シーザー)『身毒丸


身毒丸』といっても蜷川幸雄のじゃないですよ。
寺山修司の劇団「天井桟敷」の方です。70年代のオリジナル。


何かで読んだときに、J・A・シーザーは日本で最初のヒッピーだったのだと。
60年代末とかそういう時期じゃなくて、
もっと前からこの国をあてもなく放浪してて、髪が腰まであったのだと。
寺山修司と出会って意気投合して、以後その舞台・映画の音楽を担当する。
ブルースやジャズについてどうこうと評論家ぶって言っていた
寺山修司が全面的に任せたわけだから、その音楽性は今聞いてもかなり高い。


このCDは1996年のCD化。見つけたときに買っとかないと、と思った。
J・A・シーザーのソロによるリサイタル、『国境巡礼歌』も合わせて買った。
寺山修司の他の作品、演劇だと例えば『奴婢訓』や
映画だと『田園に死す』や『さらば箱舟』の音楽が
CD化されてるのかどうかで言うと、分からず。
先ほど調べてみたら、この『身毒丸』や『国境巡礼歌』、そして『阿呆舟』が
昨年、SHM-CDで再発されていたようだ。劇団「万有引力」の音楽も。
田園に死す』や『さらば箱舟』も2000年代前半に再発されていた。
それほど珍しくはないようだ。


身毒丸』を今回改めて聞き直してみた。
1曲目は三味線による唄。歌い継がれるうちに枯れてしまったかのような。
それが2曲目以後は1970年代和製ロックの真骨頂のようなゴリゴリしたロック。
不器用な若者が、居住まいだけは正そうとしてそれが自己流の礼儀になってるような。
しかも、オペラ。フルコーラスの入った。
帯には「説教節による見世物オペラ」とある。
これ、すごくない? 今の耳でこそ聞くべき。
僕は1970年代のロックに詳しくない。
それでも、村八分四人囃子と引けをとらない独自の音楽性を感じた。
劇伴ってことで不当な地位に追いやられ、それっきり?


架空の故郷、架空のノスタルジア
架空の町外れにいつのまにか居ついているみすぼらしいサーカス。
架空の場末、架空のアングラ。
寺山修司と聞いてイメージするそのままが、鳴っている。
寺山修司が生み出したものって、言葉じゃなくて、イメージなんですよね。


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□「Survival Research Laboratories」


これこそ、珍品かもしれない。
1978年、マーク・ポーリーンを中心にサンフランシスコで結成された
Survival Research Laboratories の公演の模様をいくつか収めたサントラ。
SRLの公式HP:http://www.srl.org/


どこから説明していいか、分からない。
今から数百年後か、数千年後か。
人類の死滅したあとの荒野でロボットたちが基本プログラムに基づいて
殺し合いを演じている、そんな場面を”アート”として演出し、実行する。
今も活動は続いているようだ。恐るべし。
僕は本気で尊敬する。


1999年に一度だけ来日した。そのときのイヴェントの模様を含めて、
以前、名古屋に住む映画サークルの先輩の家に泊めてもらったとき、
夜寝てるときにビデオを見せてもらった。愛知万博の頃だった。
これはやばいと思って、DVDをオーダーした。その当時たまたま日本盤が出ていた。
神保町の古本屋で『夜想』のSRL特集号を見つけた。
(残念なことに今、部屋の中で見つからないため何が書かれていたのか分からず)


サントラと言っても、もう、本気でノイズですよ。あらゆる意味で。
2曲目の解説にこんなことが書かれている。
「pre-recorded auto race & car crash sounds
 mixed live to active machine & robot noises.
 amplified hand-held hole-punches with orchestrated feedback.」
売る方も聞くほうもキチガイだと思う。


驚いたことに、amazonでこれら、1曲ずつMP3で売られていた。


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□J.Spacemen / Sun City Girls「Mister Lonely」


かつて天才児と称されたハーモニー・コリン監督の現時点での最新作。2007年。
有名人のそっくりさんを集めた小さな
「誰も触れない僕たちだけの国」で暮らす孤独な人たちの悲しくて、優しい物語。
主人公ディエゴ・ルナマイケル・ジャクソンになりきる芸を演じてて、
(タイムリーと呼ぶにはちょっとずれていた)
彼を「夢の国」に誘うマリリン・モンローは『モーヴァン』のサマンサ・モートン
この設定だけでも、最初から最後まで切ない。
(ちなみに、同じぐらい天才の
 ヴェルナー・ヘルツォークレオス・カラックスも出演)


そのサントラが
元 Spacemen3 にして現 Spiritualized のジェイソン・スペースメンと
サイケデリア隔世遺伝の弟子筋に当たる Sun City Girls であるならば。
そりゃもう、買いますよね。
音を聞いても、やはり切ない。