毎年この時期、部屋の中に小さな虫が現れる。
真っ黒で丸くて、体長5mmぐらい。
何かしらの昆虫なのだろうか。モソモソとのんびり動いている。
夏が近づいたある日から1週間ほど、帰ってくると1日に2・3匹床に見かける。
何の害もなさないけど、僕はそれらをティッシュで包んで捨てたり、
掃除機で吸い込んだりする。
それがまた突然にいなくなる。
そう、今年は昨日辺りから姿を見せなくなった。
部屋のどこかに卵を産み付けていなくなるのか、
それともこの時期は窓を開けるから網戸の隙間から入り込むのか。
もしかしたら本当に一週間の命なのか。
だとしたら僕は非常に残酷なことをしている。
だけどほっとくわけにもいかない。
とにかく、僕はこの虫の名前を知らない。
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ここまで書いてきてふと思ったのだが、
僕は昆虫であれ植物であれ、その名前を、種類を、知らなさ過ぎる。
道ばたに咲いている花で区別がつくのは
タンポポ、アサガオ、ヒマワリ、チューリップ、アジサイ、それぐらい。
みなさん、どうですか?
小さい頃、取り立てて自然というものに興味を持たずに育つと
ほんと何も知らないままとなる。
そこにはたくさんの生き物たちがいたはずなのに。
観察しないと、見えてこない。そして何も見ていなかった。
だから大人になって部屋の中に現れた虫は異物でしかなくなるんだな。
何の感情も持たない。
かといって今更興味をもつもんでもないしね。
こんなとき、自分はとてつもなく狭い世界に生きていると感じる。