文章表現術入門

まあちょっとアレな話で恐縮ですが。
ギョッとする内容でまずはひきつけます。


『ある日歩いていると道端を季節はずれのゴ×××がモソモソと動いている。
 いつもなら踏みつぶすけどなんとなく、ま、いいかと思った。
 次の日また歩いていたら色白の、薄幸な感じの絶世の美女が現れて、
「昨日助けていただいたゴ×××です。お礼を言いたくて伺いました」
 なにそれ? と思って僕は無視して通り過ぎる。すると…』


人によってはこの先の展開がホラーだったりコミカルなものだったりするだろう。
少しいじってみる。


『ある日歩いていると道端を季節はずれのゴ×××がモソモソと動いている。
 いつもなら踏みつぶすけどなんとなく、ま、いいかと思った。
 次の日また歩いていたら色白の、薄幸な感じの絶世の美女が道端に立っていて
 僕に向かって話しかけてきた。「あの…」』


こんなふうにすると「僕」はつながりが分からなくて、
後に「そういうことだったのか!?」という展開になる。
これを、


『ある日浴室に季節はずれのゴ×××がモソモソと動いていた。
 いつもなら新聞紙で叩きつぶすけどなんとなく、ま、いいかと思った。
 次の日浴室に入ったら色白の、薄幸な感じの絶世の美女がうずくまっていて
 僕のことをじっと見上げていた。』


とするとつながりが分かる。微妙な差のはずなのに。
いるはずのない人がそこにいる、というところですね。


次、こんなふうに変えてみる。


『ある日歩いていると道端を季節はずれのゴ×××がモソモソと動いている。
 いつもなら踏みつぶすけどなんとなく、ま、いいかと思った。
 次の日また歩いていたら色白の、薄幸な感じの絶世の美女が現れて、
「昨日助けていただいたゴ×××です。お礼を言いたくて伺いました」
 なにそれ? と思って僕は無視して通り過ぎる。すると…。


(中略)
 そして僕は末長く幸せに暮らしましたとさ。』


途中を思いっきり読者に丸投げしてみる。
あなたはどういう展開を想像しますか?


こういうときってだいたい、順番を入れ替えますよね。
回想型にしてみたり。


『孫夫婦が賑やかに帰っていった。その静けさの中にふと、
 これまでの私の人生は幸福なものだったということを感じた。
 あの時だったのだな。


 ある日歩いていると道端を季節はずれのゴ×××がモソモソと動いていた。
 いつもなら踏みつぶすけどなんとなく、ま、いいかと思った。
 次の日また歩いていたら色白の、薄幸な感じの絶世の美女が現れて、
「昨日助けていただいたゴ×××です。お礼を言いたくて伺いました」
 なにそれ? と思って僕は無視して通り過ぎる。すると…』


この時間的距離感の伏せ具合が、
え? なんで幸福になったの? しかもゴ×××でしょ?という疑問が、
そのまま奥行きとなる。


今、会社。
ここまで書いてきて、おっと、そろそろ仕事しなくては…