両国日和その2

13時になって4人が集合して、チケットを買って『大浮世絵展』に入る。
http://ukiyo-e2014.com/
覚悟していたけど中は大混雑。
僕のように大相撲初場所と合わせて、と考えた人も多いだろう。
「列に並ばなくても結構です。空いているお好きなところからご鑑賞ください」
学芸員の方が何度も注意喚起している。
列に加わった人たちは牛歩戦術のように身動き取れなくなっていた。
僕はもちろん加わらず、少し離れたところから覗きこんで、
空きが出たところに入り込んでいった。


鈴木春信の描く触れなば落ちんといった風情の女たち。
勝川春章の描く真っ赤な隈取の歌舞伎役者たち。
鳥居清長の描く水辺で科を作る遊女たち。
そして何よりも斬新だったのは渓斎英泉の青。
ふとした弾みに「あ、これいいな」と気持ちが通じ合ったとき、思わずため息が出る。
何気ない小品にこそ日本的佇まいが宿っていたりする。


喜多川歌麿の辺りから東洲斎写楽を経て
葛飾北斎歌川広重が向かい合い、歌川国芳に抜けるところが
やはり一番の見所であって、人だかりも多い。
僕も何度も行ったり来たりしてじっくりとは行かないまでも少しずつ味わった。
あれこれと写真で見ていたものにようやく実物として対面する。
意外とサイズが小さい。当たり前か。
葛飾北斎富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」「富嶽三十六景 凱風快晴」
「百物語 お岩さん」「百物語 さらやしき」
歌川広重東海道五十三次之内 庄野 白雨」「名所江戸百景 大はしあたけの夕立」
歌川国芳「としよりのよふな若い人だ」
北斎の冨士や波もさることながら、
広重の斜めにサーッと降り注ぐ雨に今回鬼気迫るものを感じた。
構図が左右対称に落ち着くことはないし、その雨も一様ではない。
画面いっぱいに広がったそれは、人智を超えた計り知れないものを描いている。
窓枠にちょこんと乗っかった猫の後ろ姿を描いた絵もよかった。


サイトに掲載されていた以下、有名な作品は今回見当たらなかった。
混雑で見落としていた可能性もあるけど
もしかしたら時期によって入れ替えるのかもしれない。
菱川師宣見返り美人図」
東洲斎写楽「三代目大谷鬼次の江戸兵衛」
歌川国芳「相馬の古内裏」「其まヽ地口猫飼好五十三疋 上中下」


図録と北斎と広重の絵葉書を買った後に常設展へ。
日本橋に両国橋、長屋に商人屋敷とミニチュアを眺めていると楽しい。
昭和に入ってからのスバルの本物や同潤会アパートの模型なんてのもあった。
外国人観光客にとっては楽しいだろうな。
国技館で相撲とセットで1日過ごすとよさそう。
子供向けのイベントの日ってことでアクロバットの披露がお客さんを集めていた。


もうひとつの展示室では東海道五十三次を順に全部見せるという。
ものによっては複製だったりもするが、
全部一連なりに並んでいるのを眺めるのは壮観だった。
ふと気づくに、あれこのいくつかは1階の「大浮世絵展」でも見かけたなと。
そうか、版画だからオリジナルが1枚キリではなくて
当時たくさんの数をたぶん刷っていたのだな。
そのほとんどが失われたにしても。


1階に戻ると入場券を買う人たちがやはり長蛇の列を成していて…
もう少し落ち着いてから、また見に行きたいものだ。