錦糸町という町

ゴールデンウィークの結婚式の打ち合わせのために
4月中旬にもう一度箱根の芦ノ湖湖畔まで出かける。
ロマンスカーを予約しようとして小田急のサイトを見ていたら
新宿・池尻大橋から直通の高速バスがあるということを知る。
池尻大橋なら田園都市線で一本。
これは便利だと行きはバスを利用することにした。


ロマンスカーはネットで予約・支払ができるけど
高速バスは電話で申込して後日引取と支払に行かないといけない。
その期限が一週間で、受取場所は小田急トラベルの各営業所。
新宿か経堂でいいだろうと思っていたら
この土日あれこれと予定があって無理しないと行けそうにない。
期限は迫る。どうしたもんかともう一度サイトを見てみたら
小田急線とは反対方向、錦糸町と北千住になぜか営業所がある。
錦糸町は神保町から半蔵門線で一本。
よしこれだ、と昨日の昼、会社の昼休みに往復してきた。


もしかしたら錦糸町は初めてかもしれない。
あったとしても20代の頃、会社帰りに飲みに行って一度ぐらいか。
改札を出て地上に出る。
ああ、これってどこかに似てるな、と思う。
大阪の動物園前の駅を出たときか。
駅の真上に「スパワールド」が建ってるようなあの感じ。
一方は開けていて、もう一方は
昔ながらの小さな店の寄り集まったアーケードの商店街が広がる。


錦糸町の交差点に立つ。
初めてなので歩道橋に上ってみる。
道路は広く、駅前の空間も広い。
公園ではなく、平らに広がったコンクリートがあるだけの広場。
人通りは多いのに賑わっている、熱気があるという雰囲気がなく、
乾いた、白茶けた空気が広がっている。
20年前のモスクワの街がこうだったよな、と思い出す。
駅周辺部から少し歩くと雑居ビルに小さな飲み屋が固まっているが、
この広場はそれら強引になぎ倒して作ったかのようなどこか不釣合いな広さ。
自然な人や物の流れを感じさせない。
そういうところにも旧ソ連の計画経済っぽさがあった。


東京では他に見られないような得体の知れない力がカラカラと渦巻いているのを感じる。
密集した猥雑なものと、それを押さえつけるものと。
昭和40年代や50年代の残党が百鬼夜行として夜の間歩いていて、
昼間の今は道端で眠っているような。
西へ向かえば西へ向かうほどアジアらしさが増していくという意味で
ここは大阪的なアジアを感じる。
大阪から来た知っている人が最初からここで探していたというのもなんだかよくわかった。
パチンコ屋やJRAがあるから、ということではない。


僕がここに住むことはないな、と思う。
また訪れることも当分ない。
夜を見てから言えと舌打ちされそうだが、僕にはその元気はない。