青森へ その4

7時半起き。寝てて何度か目を覚ました。
日中寒かっただけに明け方かなり冷えた。
しかし起きると快晴で陽射しが射しこむ。
昼間暑くなりそうだった。
 
なつぞら』を見ながら朝食。
カレー。茹でたソーセージ。ゆで卵。ブロッコリー。トマト。
一昨日・昨日とずっと本を読んでいたので、この日は県立美術館へ。
青森駅まで歩いてバスに乗る。
8時半に家を出る。スーツを着て会社に向かう人たちをチラホラ見かける。
青森銀行本店前の気温はこの時間で23℃だった。
昨日は11時半で21℃。やはり上がってる。
 
本町から新町と歩いて駅前へ。
目の前でバスが行ってしまう……
あれ、と思うが平日・休日の時刻表を間違えていた。
とりあえず次に来た新青森駅経由の西武営業所行きに乗る。
新町をぐるっと回って古川に出て跨線橋を渡り、その先の石江の橋を。
この辺から歩くといいだろうかと下りたところが奇しくも
小学校の頃に通ったヤクルトのスイミングスクール前。懐かしい。
30年を経て色褪せてもまだ健在だった。
 
雲一つない晴天の下を20分ほど歩いた。
石江の商店街は高校の帰り道、自転車で何度か通ったことあったはずだが、
新しくできたのか道路が広くなっていて記憶と違っていた。
というかこの辺りは義弟が新青森駅まで迎えに来てくれたときに何度か通ったな。
 
美術館に着く。
三内丸山遺跡の隣りということもあって緑の公園が広がっている。
虫が鳴いている。
真っ白い建物の中に入る。
だいぶ老朽化が進んでるけど、居心地のよい場所であることは変わらず。
 
さっそく、アレコホールへ。
ビルで言えば4階ぐらいはあるだろうか。
広い空間の壁4面それぞれに
シャガールが手掛けたバレエ作品『アレコ』全4幕が架けられている。
そのひとつひとつが縦9m、横15mだというからとてつもなく大きい。
県立美術館ではそのうち1、2、4幕を所蔵。
3幕を所蔵していたフィラデルフィア美術館が改築により長期貸出してくれることになって、
全部が揃った。2021年3月頃までとのこと。
シャガールらしい幻想的なモチーフで描かれる愛の誕生とその喪失。
平日午前中の美術館は人も少なく、心ゆくまで眺めることができた。
 
企画展は入れ替え中で、この日は常設展のみ。
尼崎市のコレクションからはるばる青森に来た白髪一雄という方の描いた
大阪の素朴な水彩画となぜか急に方向転換してフットペインティング。
村上善男という注射器の針と弘前の古い町並みの地図をモチーフにした前衛的な画家の
蒐集したコレクション。岡本太郎ジャスパー・ジョーンズマルセル・デュシャンがあった。
メル・ラモス、ホアン・ヘノヴェスという画家がよかった。
そして成田亨ウルトラマンの怪獣の原画と鬼の彫像と。ケムール人の立像もあった。
ガラモン、レッドキングシーボーズ。単なる原画ではなく、人類普遍の哀しみを湛えている。
残念ながらこの日は沢田教一や阿部合成の展示はなし。
 
10時半からアレコホールで4つの幕に照明をほどこしながら
バレエ作品4幕を解説するというイベントがあって、
ホール真ん中の椅子に座って鑑賞する。
どこかの中学校が授業の一環なのかちょうど大勢で入ってきた。
『アレコ』がどういう内容なのか、実はよく知らなかった。
男女の出会いと別れを描いた、やはり切ないものだった。
 
一度外に出て迷路のように階段を上り下りして
奈良美智の「あおもり犬」を設置しているスペースに出る。
皆記念撮影している。僕も近づいた。
冬はこの通路閉鎖されているので屋内からガラス越しに見るのみ。
初めて至近距離から眺めた。触れた。
その白い身体にはバッタが貼り付いていた。
 
リンゴとたわむれる猫の写真のポストカードを買う。
外の八角堂というところに奈良美智が新しくつくった彫像が展示されているというので
見に行くが、遠くからてっぺんが見えるのみ。
どこから近づくのだろうと迷っていたら中国人と思われる観光客の方が
身振り手振りで行き方を教えてくれた。
 
市営バスで戻るつもりで少し早くバス停に着いたら何人か先に待ってる人たちがいて、
小型観光バスの「ねぶたん号」が来た。せっかくなのでそっちに乗ってみる。
青森駅行き。いくつか観光地を回ることになっていて、次の停留所は新青森駅
津軽海峡フェリーターミナル、あおもり北のまほろば歴史館、アスパムと回る。
来るときは石江から南にまっすぐ伸びる道路を歩いたけど、
新青森駅からこの道に戻って来て逆にまっすぐ北へ行って道なりに進むと
フェリーふ頭なんですよね。そこから海沿いに進んでベイブリッジを渡って、という。
ぐるっと回って無駄がない。よく考えたコースだな、と思う。
フェリーふ頭はかつて住んでいた油川の家からも近く、
思いがけなく懐かしいショートトリップとなった。
 
青森駅前で下りてワラッセで土曜に会う方たちへのお土産を買う。
軽くてかさばらないものを探したら青森ヒバの栞があった。
A-FACTORYで留守番の妻へのお土産に秋限定の「じょっぱり」、弘前城を描いたシードル、
アカシアの蜂蜜の瓶詰。全部割れ物だったのでその場で宅急便にして送る。
 
ニコニコ通りを歩いて古川の「つじ田製麺所」で昼のラーメンを食べる。
荒煮干しのバラ肉チャーシューにゆで卵を追加。
平日だからか高校生が多かった。午前中だけなのだろうか。中間テスト期間?
 
歩いて帰る。今日もまた母から頼まれた塩飴を探すが見つからず。
家を過ぎてさらに棟方志功記念館の方まで行くが…
陽射しのある中を歩いて喉が渇く。家の近くの酒屋で缶のハイボールを買った。
家に着いて14時。これまでに読み終えた本ともらった鯖缶
コンビーフを段ボールに詰めて宅急便で送る。そのための荷造りをする。
 
あとは家でゆっくりすごす。
青森の水で作った氷でハイボールを飲みつつ、音楽を聞きながら、
熊本上通の「汽水社」で買った村瀬秀信『止めたバットでツーベース』を読む。
窓を開けると風が入ってくる。
 
夜はカレー。茄子とササギの味噌炒め。焼売。『こころ旅』を見ながら食べる。
部屋に戻っていいちこの水割り。飲みすぎだと母が心配する。
『止めたバットでツーボール』をイッキに読み終える。
この方のことは知らなかったが、副題に「村瀬秀信 野球短編自選集」とある。
ライターのようだが、野球以外のことも書いているのだろう。
「君は近藤唯之を知っているか」「ヤクルト芸術家」「ジントシオ」といった作品には
プロ野球の周辺で強烈な人生を送っている人を描き、
「鉄砲玉のゆくえ」「小さな村の甲子園、ふたたび」「PLチャーハン」では
スター選手、強豪校ではない、だけど一生懸命の人生を言葉にする。
プロ野球ってスポーツである前に選手やファンの生き様なんだよな。
素晴らしい一冊だった。
だけどこの本、著者のサイン入りで読まれた形跡がない。
誰がそんなもったいないことをしたのか。
 
この後もう一冊何かを読んで23時には寝るか。
The PoliceTodd Rundgren の10代の頃から何度も聞き返したアルバムをかけて、
ようやく実家に帰ってきたなという気持ちになる。
だけどそれが東京に戻る前日の夜。