ヘリコプターというもの

朝、たまたま目に留まって iPhone の中に入れていた
渋谷慶一郎『The End - EU Edition -』を聞く。
初音ミクをフィーチャーしたオペラ。パリでも上演されたという。
初音ミクの語るセリフの中に「ヘリコプターの音が聞こえた」というのがあった。
バックグラウンドのSEとしてヘリコプターの横切る音が聞こえたように思う。
 
ヘリコプターという乗り物はとても映画的だ。
あの独特な細切れの回転音。パタパタパタ……
飛行機の直線的な音と違って
映画のフィルムが1秒間に24枚の映像を断続的に映し出すような感覚があるからだろう。
近付いては遠ざかっていく音の風景を描き出す。
 
ここぞというところで登場して謎めいた余韻を残す。
森田芳光監督『家族ゲーム』のラスト、
室内にいた母親はヘリコプターの音を聞いてベランダに出て空を見つめる。
しかしヘリコプターの機体も背景の空も映し出さない。
映画史上に残る名場面だ。
阿部公房原作、勅使河原宏監督砂の女』も最後は……
『マッドマックス2』にも骨格だけの原始的な小型ヘリコプターが登場した。
 
いつか乗ってみたいと思いつつ、まだその機会はない。
乗り合いの東京湾夜景クルーズがあると聞いたことがある。
ここか。
貸切だと1時間で50万。
自分の家の上空まで来てもらって引き返すなど。
自腹だとさすがに無理か。
 
以前書いたかもしれないが、10年ぐらい前に一緒に仕事をしていた方が
伊豆諸島のとある島で結婚式を挙げることになり島に渡ろうとしたが、
結婚指輪を忘れてきてしまった。引き返すが、そうすると船に間に合わない。
ヘリコプターをチャーターして島まで飛んだという。
一生に一度のこと。いい話だと思う。
 
普段目にするのは何か事件かイベントがあったときに報道各社が飛ばすものだけど
ドクターヘリや山岳救助といった緊急性の高い場面で人知れず利用されている。
石塚真一『岳』に寡黙なパイロットが時々出ていた。
吹雪が強くなって近づけない、ここまでなら可能だ、どうする、といったような。
死と隣り合わせの危険な職業。
やっぱ素人が興味本位で乗るものではないか。