『100日後に死ぬワニ』

『100日後に死ぬワニ』が完結したとして今、話題になっている。
1日1話の日めくり形式の4コマ漫画で、
4コマ目の下に「死ぬまであと99日」とカウントダウンされていく。
その名の通り、『宇宙戦艦ヤマト』の「地球滅亡まであと100日」みたいに。
 
オリジナルはTwitterで連載されたんだったか。
「ねとらぼ」にまとめて記事があったので一気に読んだ。
昼に弁当を食べながら10分ぐらいで。
 
今、あちこちの新聞やテレビで話題になっているように
フリーターのワニとその友人たちのなんてことない日常が淡々と綴られている。
オチはなく、ただその日の出来事とわずかばかりの感情の起伏のみ。
何か起きたことというよりも、何も起きなかったこと。
 
最初のうちはその何も起きなさ加減に漫画として違和感を感じるが、
次第に馴染んできてそのペースにこちらが巻き込まれていく。
恋の行方とか将来やりたいことといったモチーフも見えてきて
気が付くと続きが気になっている。
それらも次の日急展開ということもなく、
もじもじしているうちに10話=10日かかってようやく少し進むというような。
その間には惰性で続くだけの毎日。
現実の僕らのもじもじ感を忠実に再現している。
ああ、これはやはり毎日1話ずつリアルタイムに読むべきだったな、と後悔した。
後追いでストーリーを一気に知ることは簡単だ。
この進まない感じを共有することこそが大事だった。
 
後追いでもかなり切ない気持ちになった。
でもこれ、フォーマットというか語り方の勝利だな。
コロンブスの卵的に新しい型を見つけて、とことん磨き上げたということ。
最近だとM-1で評価されたミルクボーイやペコパの「新しい」漫才。ありそうでなかった。
少し前だと『電車男』もそう。後から出てきた二番煎じは圧倒的につまらない。
 
……と言いつつ、もちろんそれだけではなくて。
ただ単に「死ぬまで残りあと1日」とカウントダウンしていくだけの乱暴な漫画だったら
こんなに話題とならなかっただろう。
ワニやネズミたちといったキャラクターが何の変哲もないようでいてよくできているから
自分や自分の周りの人に重ね合わせることができた。
それらを体現する簡素な描き方もぴったりと合っていた。
たまたまヒットしたヘタウマ漫画ではなく、緻密な計算の上で成り立っていると思う。
 
それにしても。
やっぱハッピーエンドはないんだなあ。