『平成狸合戦ぽんぽこ』

昨晩は TSUTAYA DISCAS で借りっぱなしになっていた
高畑勲監督の『平成狸合戦ぽんぽこ』を見た。
先月ぐらいかな、途中まで来てどうにも眠くなってギブアップ。
ゴールデンウィークに入ってようやく、またトライするかと。
 
昨年の国立近代美術館での高畑勲展に行って
火垂るの墓』以外の作品ももっと見ないとなー、
まずはとっつきやすそうな狸の童話にするかと
ほぼ予備知識ゼロで選んだみたら……
とんでもない怪作だった。
 
開発の進む多摩ニュータウンが舞台。
狸たちは住処の山を追われ、人間たちを追い払うために化け学を駆使して戦いを挑む。
急進派の狸、穏健派の狸、長老たち、いろんな立場の狸が出てきて
最初は工事現場などで単発で驚かしていたのが奮起して百鬼夜行のパレードへ。
しかしそれも人間たちに都合よく利用されてしまう。
その間に若いたぬきのほんわかとした恋の模様を挟んでみたり。
 
この狸たちの人間たちへの戦いが試行錯誤の連続で場当たり的なので
起承転結はあるんだけどかなりゆるやかになってしまう。
思わず寝落ちしてしまい目を覚ました時、
前の場面が続いているのか次に進んでいるのかよくわからない。
とにかくとぼけた狸たちがきょとんとしながら朗らかに大騒ぎしている。
 
わかりやすく因果応報の伏線をつくって、
一直線のストーリーにすることも可能だったろうけど
そうしなかったのは高畑勲監督の思いがあるのだろう。
だって現実ってそうじゃないですかと。
当事者にしてみれば試行錯誤の折り重なったものを
後になって誰かが客観的に見た時にストーリーが生まれる。
 
割り切れないものばかり。
自然は大切です、動物と仲良くしましょうってことを言いたいのではないと思う。
かといって人間の文明的な生活と折り合いをつけましょう、ということでもない。
結論は今ここで出せないが、それぞれの立場から意見がある。
高畑勲監督はそれをとことんぶちまける。
その割り切れないメッセージ性で見終わった後、おなかいっぱいになる。
 
子どもたちに見せたら混乱しないか。
どこか共感する部分を切り取って考えるきっかけになるだろうか。
こういう作品こそ子供たちに見せるべきだ、と思う反面、
具体的に友人・知人の顔を思い浮かべてこの映画のDVDをプレゼントするかというと
そこはためらってしまう自分がいる。
 
火垂るの墓』が高く評価され、『おもひでぽろぽろ』もヒットした。
宮崎駿監督や鈴木敏夫プロデューサーから
そろそろ自分のつくりたい作品をつくりなよと言われてつくったのが
この『平成狸合戦ぽんぽこ』なのではないか。
溢れ出す思いが抑えきれず、詰め込めるだけ詰め込んだ。
それがこのイソップ寓話の教訓100連発みたいなことになったんだな。
 
現代社会について、そこで生きる人間について
ここで全てモヤモヤしたものを吐き出したからこそ
次作が四コマ漫画を原作とした『となりの山田くん』となって、
さらにその次の『かぐや姫の物語』の高みへとつながったのだろう。