経験の唄

高校球児が自分より年下になったことに気づいた時、
大人になったと思う。
現役のプロ野球選手に自分より年上がいないことに気づいた時、
人生の折り返し地点を過ぎたのだと思った。
もう若くはないのだなと。
 
若いつもりでいたのは、自分の中の時間が、
自分の都合のいいところで止まっているから。
若い人たちと接することは少なくなって、
若い人たちの見るテレビや Youtube を見ることはなくて
若者たちの話す言葉をいつのまにか全く知らなくなっている。
 
若い人たちからしたら僕はいい歳したおっさんなのだろう。
いつからそうなったのだろう。
どこまでジャージとサンダルで行動できるか。ヨレヨレのTシャツで。
今の僕は駅前のショッピングセンターぐらいならいいんじゃないかと思う。
改札をくぐった向こうが、僕にとっての外側。
 
もはや体重も思うように減らない。血圧も下がらない。
食べられる量は減ってきたというのに。
どこかにこれまでの経験の活きる場所があるのだろうかとふと思う。
どこにもそんな場所がないということに気づくのが次の局面か。
ああ、やはり僕は世の中から必要とされてこなかったなと。
 
それを笑い飛ばせばいいのか。
くよくよしてもしょうがないのは確かだが。
いつまで笑っていられるだろう。
若者たちが僕のことを笑っている。
若者たちが僕に代表される誰かを笑っている。