先週買ったCD #188:2024/06/03-2024/06/09

2024/06/04: tower.jp
Can 「Live In Aston 1977」 \2750
 
2024/06/04: ヤフオク
The Jesus And Mary Chain 「21 Singles」 \880
 
2024/06/04: diskunion.net
Devine & Statton 「The Prince Of Wales」 \1300
Devine & Statton 「Cardiffians」 \980
 
2024/06/06: メルカリ
Pussy Galore 「Live In the Red」 \500
 
2024/06/06: diskunion.net
Joey Heatherton 「The Joey Heatherton Album」 \3000
 
2024/06/07: www.amazon.co.jp
HOLiDAYS 「Opening Address」 \700
HOLiDAYS 「Pure & Sweert」 \449
HOLiDAYS 「20020915」 \342
 
2024/06/08: BOOKOFF 自由が丘駅前店
Cowpers 「4 Giga」 \2530
Coweper 「Every Little Singles」 \1760
 
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Devine & Statton 「The Prince Of Wales
 
Young Marble Giants 信仰というか
アリソン・スタットン信仰と呼ぶべきものがある。
Young Marble Giants はD.I.Y. なポスト・パンク、インディー・ポップの元祖とでもいうか。
”Colossal Youth” を初めて聞いたとき、世の中にこんな音楽があるのか、ありえるのかと驚いた。
 
先日も話題に出した、新星堂の英インディーコンピ「3x20」(1990)で聞いた。
2枚目の Blue の1曲目に入っていた。
2枚目のテーマはネオアコだった。
続く、
Felt ”Something Sends Me To Sleep”
Marine Girls ”Lazy Ways”
Josef K ”The Farewell Single”
Everything But The Girl "Night And Day"
Pale Fountains ”Just A Girl”
どれも名曲だった。
美しく、儚く、優しく、だけどどこか屈折していた。
その中で ”Colossal Youth” が放っていた異質は格別だった。
何回も何回も聞き直して、30年近く経ったけど今も異質だと思う。
 
簡素なリズムボックス、キーボード、ベース。
隙間の多い、どころか、隙間しかない、
楽器の演奏を覚えて1週間ぐらいの荒いバックの上に
アリソン・スタットンの鼻歌のようなヴォーカルが乗っかる。
2分にも満たない。
え? これ何? と思ってるうちにあっという間に終わる。
 
彼らが唯一残したオリジナル・アルバム「Colossal Youth」 (1990)も、そう。
日常生活の何気ない瞬間を切り取っただけなのに、そこが異次元につながったかのような。
否定をしないが、肯定もしない。
ただそこにあるだけ。
ただそこにあるだけ、の音。
ここまでイノセントな音は誰がどう逆立ちしても作り出せないだろう。
ただ隙間が多ければいい、ただ下手であればいい、ただ純粋無垢であればいい、
というのではない。
世界の歴史の中でこの音が成り立つ、唯一の時間と場所を見つけることのできた稀有な音楽。
 
アリソン・スタットンが次に組んだバンド、Weekend の方がアルバムとしてはよく聞いた。
Weekend もまた1枚しかアルバムを出さなかった。「La Variete」(1982)
いつでも気軽に手に入るというアルバムではないが、
今もひょっこり忘れたころに再発される。
「Colossal Youth」もうそうだけど、当時のシングルやEPの曲を大量に追加して。
 
ジャズやラテンに接近した音。メンバーも変わって、普通に弾ける。
最初のシングルだった ”The View from Her Room”  がやはり、
「3x20」の Blue に入っている。10曲目。
「3x20」の方はシングルバージョンなのか4分ぐらいであっさり終わるが、
こちらのアルバムというか編集盤に入っている方は8分強。
途中のブレイクからそのままラテンの密林へと分け入っていく。
インストだけになって、アリソン・スタットンの声は退場する。
どちらも甲乙つけがたい。
 
Young Marble Giants異世界への裂け目がそこにあるという音だとしたら、
Weekend は異世界に憧れてそこに旅するという音。
異世界はだいぶ遠くなった。
 
なお、解散後の次のグループ、Working Week (Weekend に対する平日)は
アリソン・スタットンは参加していないが、
さらにラテン、ジャズに近づく。何よりもソウルに近づく。
中心メンバーだったサイモン・ブースがよりうまくなったということだろう。
彼らの最初のアルバム「Working Week」(1985)もまた、名盤。
どちらかというと、同時代にデビューした
Matt Vianco (最初のアルバムにはバーシアがいた)や
Blue Rondo A La Turk(Matt Vianco の前身ともいえる)
といったファンカラティーナの文脈で語られることが多いか。
 
では、アリソン・スタットンのその後となると、今回の
Devine & Statton となる。
こちらはなんとか2枚のアルバムを残すことができた。
「The Prince of Wales」 (1988)
「Cardiffians」(1990)
どちらもクレプスキュール(Les Disques Du Crépuscule)から。
 
そこまでは追ってなかったつもりが、1曲だけ聞いたことがあった。
それがやはり、「3x20」の Yellow で。
テーマは確か、自分たちのスタイル、だったような。
最後の方に New Order  ”Bizarre Love Triangle” のカバーが収録されている。
この曲ずっと引っかかっていて、でも New Orderネオアコカバーだからか、と思っていた。
自分でもわかっていたはずなのに、蓋をしていた。
グループ名にスタットンとあるのに、頭の中でリンクしていなかった。
30年近く。
何たる失態か。
 
例によって、21世紀に入ってから
クレプスキュールなので LTM からリマスター、ボーナストラック追加で再発されて、
でもだいぶ昔のことなので入手困難。
DiskUnion のウィッシュリストに入れてひたすら中古の入荷を待っていたら、
ようやく2枚そろって出てきた。
 
「The Prince of Wales」 はネオアコの延長で簡素な、ネオアコ
(だけど Young Marble Giants ほどスカスカではない)
「Cardiffians」はネオアコから脱却して、もっと普遍的な、たおやかなポップ。
もはや異世界の感覚は皆無。
でもまあそれでいいんだろうな。それが大人になるということ。
何も知らずに聞いた人がいたら、普通は
Devine & Statton の方が好き、聞きやすいとなるだろう。
それでいいんだと思う。
世界の歴史の中でこの音が成り立つ、
唯一の時間と場所なんてそうそう見つかるはずがない。
 
その後、アリソン・スタットンは Weekend のメンバーだったスパイクと共に
Alison Statton & Spike として活動するも、
残念ながら僕はまだ聞けていない。