先週買ったCD #145:2023/07/24-2023/07/30

2023/07/24: www.amazon.co.jp
Barbara Moore 「Vocal Shades And Tones」 \2303
 
2023/07/24: diskunion.net
The Melvins 「Five Legged Dog」 \1200
The Melvins 「Colossus Of Destiney」 \780
Paul Haig 「The Warp Of Pure Fun」 \680
The Doors 「Weird Scenes Inside The Gold Mine」 \780
 
2023/07/24: tower.jp
Lucinda Williams 「Stories From A Rock N Roll Heart」 \2420
Nina Smione 「Wild Is The Wind」 \1980
Khruangbin & Friends 「Live At Subb's」 \2640
khanate 「To Be Cruel」 \3080
 
2023/07/24: www.amazon.co.jp
Giant Sand 「Goods And Service (25th Anniversary Edition)」 \1398
 
2023/07/26: ヤフオク
David Lindley + Hani Naser 「Livie In Tokyo」 \2000
 
2023/07/26: www.hmv.co.jp
Ann Peebles 「Straight From The Heart」 (\1012)
HMVのポイントで
 
2023/07/26: www.hmv.co.jp
Madonna 「The Immaculate Collection」 \440
 
2023/07/29: www.hmv.co.jp
John Parish & Polly Jean Harvey 「Dance Hall At Louse Point」 \330
 
2023/07/29: BOOKOFF 練馬光が丘店
TOTOTOTO XX」 \250
Bob Dylan 「Live 1961-2000 - Thiry Nine Years Of Great Concert Perfomance」 \550
Ned Doheny 「Postcards From Hollywood」 \693
The Qemists 「Soundsystem」 \110
Disclosure 「Caracal」 \110
Jay Z 「American Gangster」 \110
Carole Serrat 「Message En Rouge」 \110
Rhymester 「Best Bouts」 \110
Judy And Mary 「The Power Source」 \110
 
2023/07/29: www.amazon.co.jp
Cold Blood 「Thriller!」 \1550
 
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Paul Haig 「The Warp Of Pure Fun」
 
バンドからソロへ、というときに音楽性が変わることがある。
大きく分けてふたつか。
1)ルーツに立ち返る。より自分に対して誠実な、ピュアな音楽へと向かう。
2)時代の流れに沿って、流行りのフォーマットに合わせる。
 
今回取り上げるポール・ヘイグが2)のパターンで、
元々在籍していた Josef K だけを知っていて彼のソロを聞くとかなり面食らう。
僕も初めて聞いて、ここまで180度違うのか!? とびっくりした。
 
今思うと、ビョークも2)のパターンだった。
少なくとも当時はそのような印象を思った。
The Sugarcubes のストレンジ・ポップからダンスミュージックの最前線へ!?
余りの変貌ぶりに驚いたけど、今振り返ると必然性のある変化だった。
The Sugarcubes でのビョークは蛹だったんだな。
アイスランドで結成され、ただそれだけで珍獣扱いだった。窮屈だった。
ソロになって羽化して、より広い世界へと羽ばたいていった。
なるべくしてなったソロだった。
 
ポール・ヘイグのことは正直僕もそこまで詳しくはない。
もちろん、ビョークと比べたら知名度は100分の1ぐらいだろう。
Josef K というバンドでギターを弾きながら歌っていた。
1970年代末のスコットランドで結成。3年ほどで解散、アルバムは1枚のみ。
ライヴアルバムや編集盤がその後何枚も出ている。
そういう点ではカルトバンドのひとつだろう。
ジャンル的には、日本では、その頃流行りだったネオアコに分類されるが、
決して優しくはない音だった。
ストパンクと呼んだ方がしっくりくる。
The Velvet Underground や Television に影響を受けたギターロックだった。
 
ぶっきらぼうに、機嫌悪そうに、痙攣するようにかきむしるギター。
吐き捨てるようなヴォーカル。
モノトーンのけだるい風景が延々と続いて、どの曲も同じ心象風景を描いているように思える。
そもそも、Josef K というバンド名がカフカの『審判』の主人公の名前からとった、
というところでこのバンドの立ち位置がよくわかると思う。
ひねくれていて、屈折していて、この世界に対して多くを拒絶している。
不条理なものと捉えている。
それゆえに、好きな人はとことん好きだと思う。僕も好きだった。
 
新星堂の名コンピ 『3x20』の1枚(blue)で知った。
インディーズで発表された曲を集めていて、
red / blue / yellow と3枚あるうち、1枚 はテーマがネオアコだった。
Young Marble Giants ”Colossal Youth”
Everything But Thes Girl ”Ngiht And Day”
The Go-Betweens ”Cattle And Cane” といった名曲と並んで
Josef K ”The Farewell Single”が収録されていた。
(もしかしたらこの表記は誤りかもしれず、他のCDでは ”The Angle” となっている)
 
ポール・ヘイグがソロとなっていたことを僕は知らなかった。
一部のファンからはかなり評価が高いようだ。
しかし聞いてみたら別人と思うぐらい音楽性が、少なくとも表面的には違うんですね。
このアルバム「The Warp Of Pure Fun」は1985年の3作目。
内省的なネオアコ、ポストパンクの時代は世の中的にも終わっていて、
大胆でカラフルなシンセポップへ。
それが時代の求めるものだったんだろうな。
ポール・ヘイグ自身も売れたかっただろうな。
アルバム後半に差し掛かるまで彼のトレードマークだったしゃくるようなギターは出てこない。
 
でも根っこの暗い部分はそのまま残されているように思う。
屈折した、不器用な、UKニューウェーヴのDNAはそうそう容易には消すことができない。
恐らく彼もこの頃はニューヨークのソウルやファンクに憧れた音作りなんじゃないか。
でもそれが肉体化できない。
跳ねる音がつくれず、キーボードを弾く指が上下するだけのぎこちない躍動感。
それを音のゴージャスさで補う。
思えば80年代半ばのイギリスはそういう音ばかりだった。
でもそれが悪いわけではなく。
これもまたひとつの、よくできた時代の音。
Buzzcocks のピート・シェリーもソロになってこういうシンセ系の音になったんじゃないかな。
 
アートワークも秀逸。
前景にオレンジ色の車、その脇にマネキン。溢れるガジェットたち。
キッチュな風景。
そんなジャケットかと思いきや、よく見たらこれはゴミ捨て場か。
マネキンも壊れている。
そんなポップアート的倒錯に満ちた、名作。
 
僕が購入したのは LTMレーベルからの再発。
Tuxedomoon や Section 25 に 23 Skidoo などの良質な再発を進めている。
レアな音源を発掘してボーナストラックとしてたくさん入れてくれるのもありがたい。
ここから出てくるものなら確か。
アメリカなら Rhino でヨーロッパなら LTM
そう思わせてくれる。