本を出します その2(出版社へ)

出版社を訪問した土曜について。


金曜の夜は会社の人たちと銀座にカニを食いに行って(幹事は僕)
カニミソ鍋を食べておいしい時間を過ごす。
カニを七輪の上で炭火で焼いたりもした。
最後の雑炊が最高にうまかった。
カニ味噌の入った鍋で作った雑炊。うまいに決まってる。
楽しい気分のまま2次会のカラオケに行く。
気が付いたら終電を逃していたのでタクシーで先輩の家に行って泊めてもらう。
さらに缶ビールを飲んで仕事の愚痴を大いに語り合う。
寝たのが4時頃で朝起きたのが10時過ぎか。そんで家に帰りついたのが12時。
眠い。ものすごく眠い。
出版社との約束は16時。一眠りする時間がある。
なのに眠れない。電車の中でも眠るに眠れない。
打ち合わせに備えて神経が高ぶっているからか。
絶対寝過ごしたらいけないという気持ちが体全身に行き渡っているからか。


風呂を沸かして入り、髭を剃って着替えてまた外に出る。
丸の内線に乗って新宿まで。都営新宿線に乗り換えて神保町まで。
ドキドキしているからか本も読めない。
東京都心の物理的な位置関係がわかってるようでわかってない僕は
新宿から神保町までは10駅ぐらいあってかなり遠いのではないか、なんて思っていた。
4駅しかない。「ふーん近いんだな」と思う。
何も考えることができず、4駅分の時間をそんなことを考えて過ごす。


あと、もう1つ考えたのは「売れるかどうか」ってやつ。
根が暗い僕は「売れないんだろうなあ」とまずは思ってしまう。
世の中そんなに甘くはないぞと。
目的がはっきりしているため旅行記は小説よりは売りやすいとしても、
無名な素人の書く文章がそうそう売れるわけがない。
バックパッカー界で名の知れた旅の名人だったらまだしも。
初版は×××部刷ることになるのだが、売れ残ったらどうしよう。
その時点で僕は出版界追放となってしまうのではないか。
大量の在庫が工場であっけなく裁断されて。
(出版社によっては売れ残ったら著者が買取というところもあるようだが、
 僕がお世話になるところではそういう契約にはならないと明記されていて助かった)


このところずっと、こういうことばかり考えている。
朝起きたとき、電車に乗ってるとき、仕事に疲れたとき。
出す前からクヨクヨしている。
1日に200冊の本が発売される。年間7000冊にもなる。
その大半が売れずに闇に葬り去られる。
メジャーデビューしたミュージシャンみたいなもんだよなあ。
売れるのは一握りの、普遍的な価値を持つ人だけ。
どこの世界でも一緒か。


クヨクヨばかりもしてられない。
考えが行き着くところまで行ってしまうと、方向が逆に転ずる。
どっかから火がついてあれよあれよという間にベストセラーになんないかなあと。
夢の印税生活。
物珍しい場所に旅行しては旅行記を書いて本を出すという素晴らしい毎日。
プランが決まる:
2冊目 ペルーの古代遺跡→ナスカの地上絵→イースター島
3冊目 アイスランドグリーンランド
4冊目 シルクロードを端から端まで
5冊目 南極


ベストセラーとまではいかなくても(そもそも何冊売ったらベストセラーなんだ?)
ある程度恥ずかしくないだけの数売れたら
また1人で旅行してそれを文章にして、もう1冊本が出せるかもしれない。
これはもしかしたら実現可能な範囲の物事なのではないか・・・。


なんてことを考えているうちに地下鉄は神保町に着く。
14時には着いてしまったので2時間近く暇になる。
神保町に来たのも1年ぶりか?
DiskUnion でCDを買って
古書店街のいつも必ず立ち寄る店で絶版になったSFの文庫をオニのように買い漁る。
それでもさらに時間が余って、ドトールでぼんやりと過ごす。
持ってきた書類の束の中から
出版社の入っているビルの描かれた地図を何回か取り出して眺める。
まるで就職活動をしているときのようだ。
なんならスーツでも着て来ればよかった。


そんなこんなで約束の時間になる。
(続く)