1人きり

大学の寮時代友人から
今度結婚することになったので披露宴に出てくれとメールが来る。
「そうかあ、よかったなあ」と思う。
彼は仕事の都合でなぜか青森に転勤となり、
2年前の秋に青森帰った時に彼と一緒に下北半島を車で回った。
旅館で夜、酒を酌み交わしているときに
そろそろ結婚を考えているのだが、自分は当分青森だし、向こうは東京だし、
などなど彼の抱えている悩みを聞かされた。
相手の方には一度お会いしたことがある。
3年前か4年前の学園祭で偶然2人いるところに出くわした。


「これでまた1人」と思う。
会社の先輩にはついこの間子供が生まれた。
映画サークル関係で以前知り合った人の披露宴の2次会に来週の日曜、出席することになった。
(僕が撮った映画に出てもらったことがあって、そのときの映像が流れるらしい)
これからもどんどん続くんだろうな。
家庭なり家族というものが、その人を中心とした円のように少しずつ形成されていく。
そんな頻繁にいろいろあるわけでもないんだけど、
例えばここ5年ぐらいの僕の身の回りの出来事を早回ししていったら
僕自身はじっと動かないのに周りの人たちがどんどん変わっていく光景が見られることだろう。
結婚式があって、子供が生まれて。
その間めまぐるしく季節が移り変わっていく。


僕は最近よく人生ゲームに例える。
「今年もまた、いくらサイコロ振っても前に進まなかったよ」とそんなことを言う。
進むために努力とは言わないまでも
なんかしてるかって言えばなんもしてないのだから仕方がない。
今のこの境遇が嫌なわけではない。
むしろ、「これでいいや」と半ばのんびりした気持ちを抱いている。
(残り半分は諦めのようなもの。まあこういう人間なんだろうなあと)
では何が不満/不安なのかと言うと、
この、なんだか周りからひっそりと取り残されていくような雰囲気が気になるってこと。
おいてけぼりをくらって、1人ポツンと「ま、いいか」と思ってる自分の姿がなんだか寂しそうだ。
「人並み」の生活を送ってないような気がして時々ものすごく焦りを感じる。


このまま1人きりだと何がどうなるだろう?
僕はこれから先5年ぐらいも、CDを山のように買っては
土日にアパートの部屋で聞くような生活を送っているのだろうか?
それって、なんだか怖いな。
何が、とははっきり言えない。だけど、何かが正常ではないようなそんな感じがする。
松屋大戸屋を中心とした外食ばかりの食事。
あるいは西友のようなスーパーで買ってきた惣菜を食べている。
掃除や洗濯は土日にまとめて。洗濯物は乾いても取り込まれず、部屋の中で干しっぱなし。
少なくともアパートぐらいは引っ越してるだろうか。もっと広いところを求めて。


35歳になった僕は何を楽しいと思って、何を悲しいと思っているだろう?
何を手に入れているだろう。何を失っているだろう。


考え出すといろんなことが不安になってきた。いろんなことが怖くなってきた。


今日はデータセンターで1人きり、徹夜で作業。
こんなことやってる場合だろうかとも思うが、
他にできる仕事がないのだから仕方がない。
「でもまあ食っていけてるわけだし」
「会社員として特に出世を望んでるわけではないし」
なんて今の境遇に甘んじて負けを認めつつある。


考えてもキリがない。
考えるのやめよう。問題を先送りしよう。