思い出が消える

これまでは部門単位で管理されていたドメインが全社ドメインに移行される。アカウントも再作成する。
(ピンと来ない大多数の人のために説明すると、
社員が自分の席で仕事で使っているPCはこれまで部門で独自に管理されていたのであるが、
今後は会社全体で管理されるようになるということだ)


そのためのあれやこれやの作業があって、非常にめんどくさい。
本来ならば5月末までに終えてなくてはならないのであるが、
僕はお客さんのところに常駐していたとかそんな理由でずるずると引き伸ばしていた。
それが昨日30日に、部門単位のドメインが廃止されるということがわかり、
慌てて昨日ノートPCを持って帰って作業を始めた。
ファイルやユーザープロファイルのコピーなんかでとにかく時間がかかるようなので
有楽町の顧客のオフィスと竹芝の自社オフィスとの間を朝・昼・夜と何度も往復した。


Windows の何らかの絡みなんだろうけど、
Outlook Express を使っていた人はそのためだけの移行作業が発生する。
僕は7年前に入社したときに初めて、電子メールというものに触れた。
それが Windows 95 のマシンだったから、
必然的に初めて使ったメーラーOutlook Express となった。
以来ずっと Outlook Express を使い続けている。
他の人が Becky!AL-MailEudora やはたまた Shuriken に続々と乗り換えていっても、
僕は使い慣れてる方がいい、特に不便は感じてないからこれでいい、ずっとそう思ってきた。


それが今回思いっきり裏目に出た。
とにかくこのメールの移行に時間がかかるということらしいので
朝、未読メールを1万通、いくつかのフォルダごとばっさりと消すところから始める。
それでも残しておきたいなんらかの未読メールが5千通ぐらい残っていて、
既読のとりあえず残しておきたいメールが1万通か2万通ぐらいあったのではないか。
それで残されたメールのフォルダの最適化を始めてみたら偉い時間がかかる。
ここでいったん諦めて顧客のオフィスに戻り、次に戻ってくるのは昼休み。
1万通もメールを残しておく必要ははっきり言って全くないのだが、
いかんせん物が捨てられない性分なので
ちょっとでもなんかに使いそうだと手元に残しておきたくなる。
前のプロジェクトのメールなど、結構というかかなり役立つ。
あれこれ進めていく上でのノウハウになる。
プライヴェートのメールは7年分全て残していた。


夜になって移行作業全体が終了する。
何も考えず手順書の記述に従って古いデータは全部消してしまった。
アカウントごとばっさりと。
「あー終わった」と Outlook Express を立ち上げてみたら驚いたことに
メールが全部消えてなくなっている・・・!
保存フォルダを開けてみてもすっからかん。
どうも移行作業のどこかに誤りがあったようだ。
今回は時間がなかったから、データのバックアップを取りながらとか、
コピーされたデータを確認しながら、とかしないで手順書に書いてある通りに行った。
どこにどんな間違いがあったのかは今となってはわからない。
アカウント移行にあたってのメールのコピーには
昼休みまるまる時間をつぶすだけの時間があったから、
とにかくコピーはされたはずだ。
なのにそのコピーが見つからない。コピー元は手順書の最後の記述に従って消してしまった。


唖然というか呆然としてしまった。
プライヴェートのメールは7年分全て残していた」
これが全て消えたわけだ。
これってものすごく悲しい。
僕は家のPCだろうと会社のPCだろうと変なものをダウンロードしてきて
インストールすることのしない人なので、ディスククラッシュを起こすようなことはない。
ウイルスにやられて、とかでたまに身の回りでメールが消えたという話を聞くことはあっても、
僕には無縁な出来事だと思ってきた。


あーあ。
メールというよりもいろいろな思い出が消えたわけですよ。
とあるきれいな女性から「食事でも」とデートに誘われたこととか、
これは面白いということで転送されてきたチェーンメールであるとか、
最近だと前のPJを離れるときにお客様からねぎらいのお言葉を頂いたとか、
本の感想をもらっただとか。
そういうのがみんなみんな消えてしまった。
がっくりだ。
本当に大事なメールは家に転送しておけばよかった。


それらのメールを日々読み返すことは特にないし、
思い出として残っているのだからいいと言えばいいんだけど、
というか死ぬときにそのメールを抱えていくわけでもないんだからいいんだけど、
「消えた」ではなくて(ミスで)「消してしまった」というのが切ない。
もう1度書く。あーあ。


思い出は思い出として、実利から言うと
いろんな人のメールアドレスが失われてしまった。これは痛すぎ。
会社を辞めた人たちのアドレスや大学時代の友人たちのアドレスが全部わからなくなってしまった。
僕は家ではメールを読んだり書いたりすることがほとんどない人間なので
(というかほとんどの場合、仕事の合間に休憩として読んだり書いたりしているので)
家にはアドレスがほとんど残っていない。
こっちは受身になって届くのを待つだけだ。
というか疎遠になりかけた人たちはもう完全にアウトだな。。。


身軽になるのはいいことだ。
ダラダラと過去に生きるのではなく、これからはスパッと現在に生きるのだ。
そうは思ってみるものの。
当分、あちゃーという気持ちは続く。