日曜の午後、六本木ヒルズの東宝に「ミスト」を見に行った。
原作スティーヴン・キング&監督フランク・ダラボン。名コンビの3作目。
というのが何よりもの触れ込み。
http://www.mistmovie.jp/
ホラー映画としては他に怖いものはいくらでもあるだろうし、
フランク・ダラボン監督の作品としては「ショーシャンクの空に」の方が断然いい。
そして個としての、集団としての人間という生き物の愚劣さを描いた映画としては
他にも優れたものはたくさんある。
凡百のくだらない作品を見るぐらいならこれを見たほうが断然いい。
でも、釈然としない。
「いやー!すげー映画見たなあ!!」という清々しい感動は全くない。
「ショーシャンクの空に」はそれが100%だったんだけど。
季節外れに去年の今頃生まれて初めて見て、ものすごく感動したもんだが・・・
今作は「フランク・ダラボンうまいね」以上、終わり。
でも、あのラストは「なるほど」と思う。秀逸。
今のアメリカ映画からしたら予想外、かつ、ものすごく後味悪い。
(とはいえそれは映画的なすごさではなくて、あくまで脚本としてのすごさなのだ)
閉じ込められた人々を描いた恐怖映画ってことで
僕としてはどうしてもジョージ・A・ロメロの古典的名作「ゾンビ」
(3部作の2作目)と比較してしまう。
あれはゾンビがどうこうという以前に映画として素晴らしかった。
「ミスト」がスーパーマーケットであるのに対し、「ゾンビ」はデパートが舞台となる。
人間という生き物がどういうものなのか、どういう欲望に捕らわれて生きるものなのか、
恐怖というものは人間にどういう作用をもたらすものなのか。
そこのところ、「ゾンビ」の方が数段上だよね。
描いたものとして、というか暴いたものとして。
秀逸な恐怖映画とは恐怖そのものを提示するだけではなく、
恐怖が何をもたらすのかに注意を払っている。
その映画の中に恐怖そのものしかないならば、あとは強度だけの問題となる。
いかにショッキングな映像が出てくるか。そしてそれがいかに奇抜か。
本当に怖い映画はそういうものに頼らなくても、怖い。
結局は人間の心の奥底に潜んでいるものこそが最も怖いのだから。