明日の終わり

明日、この世界は終わってしまう。
僕が決めた。
もう、いい。こんな世界なんて終わってしまえばいい。


僕は自転車に乗って夕暮の街を走った。
終わりゆく世界を眺めた。
人々が生活をしていた。何も変わらなかった。
子供たちが笑っていた。大人たちが家路を急いでいた。


僕は自転車に乗って海辺を目指した。
空が暗くなって風が冷たかった。
遠く向こうに星が1つ瞬いていた。
素は濱には他に誰もいなかった。
寄せては返す波が永遠に続いた。


僕は僕の住む部屋に戻った。
ベッドに寝そべって数を数えた。
目を閉じて、いろんなことを考えた。考えた。考えた。
何も聞こえなかった。
僕も呼吸する音すら聞こえなかった。
まずは音が奪われるのだろうか。
そこにあるのは静けさではない。
「無」が近付いている。
どうだっていい。
僕は眠ろうとした。


明日になればこの世界は終わってしまう。
明日になればこの世界は終わってしまう。
明日になればこの世界は終わってしまう。
明日は何をして過ごそう。
明日は何ができるだろう。
次に失うのは色彩だろうか。
それとも「ここにいる」という感覚だろうか。
僕は僕を失って、それっきりになるのだろうか。


手紙を書こうと思った。
全人類に向けて。
僕に向けて。
僕は起き上がり、部屋の中を歩く。
明日は何をして過ごそう。
明日は何ができるだろう。
明日になればこの世界は終わってしまう。
そして僕は手紙を書き始めた。
長くて、短くて、
何も書かれてなくて、たくさんの言葉があって。
さよなら。
ただそれだけを繰り返す。繰り返す。
書き終えて僕は、ベッドに戻って眠ろうとした。
続きの言葉を紡いでいった。


明日になればこの世界は終わってしまう。
明日になればこの世界は終わってしまう。
明日になれば。
そう、明日になれば。
明日になれば・・・