パブロ・カザルス

編集学校のとある師範代の方が自己紹介の中で
スペイン出身のチェロ奏者、パブロ・カザルスのことについて語っていた。
クラシックに疎い僕はその名を知らなかったんだけど、とても有名な人のようだ。
Wikipediaを参照したら、「20世紀最高のチェロ奏者」とあった。
「指揮者フルトヴェングラーはチェロ奏者としてのカザルスへ次のような賛辞を残している。
パブロ・カザルスの音楽を聴いたことのない人は、弦楽器をどうやって鳴らすかを知らない人である』」
晩年のコンサートは必ず、故郷カタロニア地方の民謡「鳥の歌」を演奏したという。


なんか気になるものがあった僕はその日のうちに DiskUnion で CD を探してみた。
そしたら中古で、「鳥の歌 ホワイトハウス・コンサート」というのを見つけた。
1961年の録音で、ジャケットにケネディ大統領の姿が見える。
メンデルスゾーンクープランシューマンの曲を演奏して、最後に「鳥の歌」という曲順。
家に帰っきて、さっそく聞いてみた。
「あ、いいかも」と思った。
下手なロックを聴くよりもよっぽど背中がゾクゾクきた。
これからの人生において、末永く聴き続けそうな気がする。
とりあえず、買ってから毎晩必ず聴いている。
心の中に刻み付けている。


ミエチスラフ・ホルショウスキーのピアノとアレクサンダー・シュナイダーのヴァイオリン。
そして、パブロ・カザルスのチェロ。
3人だけによる演奏。なのに、一言で言うならば音楽の「豊穣」
ベタな言い方だけど、クラシックという括りを超えた音楽という芸術の最高峰の1つかもしれない。
鳴らしているのは優しくて穏やかなメロディなのに、音の鳴りが違う。
ピンと張り詰めていて、その緊張感がたまらない。
King Crimson が志向していた「緊張と弛緩」ってこういうことだったのかも。


風景、というか光景が見えるような気がする。
純潔な、真っ白な世界。
苦悩する人々、悲しみに沈む人々。日々の何気ない出来事に安らぎを見出す人々。
世界中の人々の今を生きる姿が走馬灯のように流れていく
そこにはパブロ・カザルスが求め続けた、平和への祈りが込められている。
絶え間なく繰り返されてきた戦争であるとか、
人類の悲惨な歴史の積み重ねのうちに、僕らの生活は成り立っている。

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どこを切り口としてクラシックに入っていこう?
作曲者なのだろうか、指揮者なのだろうか。
ずっと迷い続けていた。


ようやく出会えたように思う。
同じくチェロ奏者だったジャクリーヌ・デュ・プレと、このパブロ・カザルス
ミーハーな僕は映画になっているからという理由だけで
ジャクリーヌ・デュ・プレを聴き始めたものの、それっきり。
パブロ・カザルスは全然タイプの違う演奏家だけど、
重なり合う部分と重ならない部分とが出てくることで、
次はどこに興味を持てばいいのだろうかと地図が描けるようになった。


とりあえずは、他のパブロ・カザルスの演奏を聴いてみようと思う。
もちろん、次はバッハの「無伴奏チェロ組曲