「チェ 39歳別れの手紙」

スティーヴン・ソダーバーグチェ・ゲバラの生涯を描いた2部作の後編、
「チェ 39歳別れの手紙」が先週末でことごとく公開を終了したことを知って、
慌てて見に行かなきゃとやっている劇場を探す。
見るのは日曜の夜。会社帰りに行ける場所となると、新宿の「バルト9」となった。
この映画館、初めて。
というか、いつのまにこんなでかい丸井ができてたんだ!?驚く。
新宿はもはや丸井の街なんだなあと思う。
ファッションにインテリアときて、最後の1ピースがシネコンだったんだろうな。
場所柄でそうなのか、それともコンセプトでそうなのか、
映画を見に来る客は10代末から20代前半ぐらいの若者ばかり。しかもカップル。
エスカレーターに乗っていると、1人で映画見に来ている人って少なかった。
話変わってここは水曜はレディースデーとか
最近どこの映画館に行っても見かける割引制度が適用されないらしく。
どこの組合に所属しているか?みたいなのがきっとあるのだと思う。

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本題の「チェ 39歳別れの手紙」
キューバ革命成功後、キューバでの指導的立場を投げうって
ボリビア密入国、反政府ゲリラの指導に当たるチェ・ゲバラ
当てにしていたボリビア共産党の援助は得られず、
疲弊しきった部隊が山岳地帯を彷徨ううちに、捕えられて処刑。


前作と雰囲気が180度違う。
キューバ革命の蜂起から成功へと向かう上り調子の過程が
物語や登場人物に明るさや陽気さをもたらしていた前作とは打って変わって
今作はとにかく暗い。
前作同様、戦闘シーンがクライマックスになるんだけど、
前作ではエンターテイメント的盛り上がりを見せていたのが、今作にはそんな余裕全くなし。
まるでドキュメンタリー映画かのように淡々と追いつめられるチェ・ゲバラが描かれる。


それゆえに最後、丘陵地帯の急斜面で夥しい数の兵士たちに取り囲まれるチェ・ゲバラ
ものすごくぞっとした気分になった。
(それはつまり、映画として、とても素晴らしいシーンだった)


華々しい場面、カラフルな場面は冒頭の、
変装してのキューバ密入国ボリビア密入国のときだけ。
後はひたすら淡い茶色と灰色と緑色がまだらになったような
山岳地帯の場面が果てしなく続く。
前作のように魅力的なキャラクターは登場せず、誰もが似たような顔に見え、
チェ・ゲバラですらそこに埋没していく。
状況がどんどん悪くなっていく、ただそれだけの2時間。
なのに見ていてずっと緊張感があって、あっという間。
骨と皮だけ。しかし余計なものが一切ない、鍛え抜かれた骨と皮。
ソダーバーグの監督としての力量はむしろこっちに表れたと思う。

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「ミルク」「フロスト×ニクソン」「スラムドッグ$ミリオネア」「チェンジリング


アカデミー賞にノミネートされた作品がそろそろ立て続けに日本でも公開される。
どれも面白そう。


長編ドキュメンタリー賞を受賞した「マン・オン・ワイヤー」がとても気になる。
ニューヨークのワールドトレードセンターを綱渡りしたフランス人フィリップ・プティの話。
見たい。いつ公開されるんだろう。
http://www.espace-sarou.co.jp/manonwire/


今後の公開作ではコーエン兄弟の新作「バーン・アフター・リーディング」は是非とも観たいね。
既に公開中だけど、ダルデンヌ兄弟の「ロルナの祈り」も終わらないうちに見に行っとかないと。