博多〜釜山 その2(3/18:高速フェリーに乗る)


歩き続けるうちに天神に出る。apple store があった。
さらに歩くと大丸と三越。向こうにキャナルシティの巨大でカラフルな建物が見える。
さらにさらに東へ。橋を渡り、この辺りが中州なのだろうか。
夜の中州の屋台を見てないからなんとも言えないけど、
博多は隙間の多いこじんまりとした都市に思えた。
ルースターズやアンジーに代表されるようなこゆくて熱い”めんたいロック”が生まれた土地、
かつ大阪よりもアジア圏に近いってことで
グツグツ煮えてる闇鍋のようなイメージを抱いていたんだけど、
平日の昼間だとさすがにそんな片鱗はなく。
どうなんだろうな。今回のショートステイでは上っ面をサラッと掠めただけ。
いつか真夏の夜の屋台にどっぷり浸かってみたい。


新地という飲み屋街を通り抜ける。
この手の名前で寂れかけた場末の飲み屋街ってどこの都市にもあるんだな、と思う。
祇園に出る。ここでまた大通りに交差して今度は北に向かって歩く。
呉服町というところに出て、どうもここがビジネスの中心街か?
港に近づいてふと見上げると道路の中央分離帯に背の高い椰子の木が生えている。


コンビニに入る。弁当が売り切れていて驚く。
時計を見ると12時半近く。昼メシ時だからだよな…?


さらに歩いて博多港国際ターミナルをようやく見つける。13時頃か。
(その隣にマリンメッセ福岡って大きな展示会場があって、「全国陶器展」ってのが開催されていた)
飛行機のように搭乗手続きが必要で、フェリー会社のカウンターがいくつかある。
受付開始は13時半からとのことでしばらく待つ。
その間、「フレンドリー・ガイド」ってのを申し込んでみる。
釜山の大学生によるガイド。穴場を案内してくれる。
8時間で5万ウォン(4,000円弱)だからとても安い。明日案内してもらうつもりでいた。
http://www.jrbeetle.co.jp/plan/friendly_guide_text.html
しかし、残念なことにガイドの空きがなくてNGとなる。
前の日だったから急すぎたか。
でも今回土壇場で行けなくなる可能性が高かったから事前に申し込むのもためらわれ。


13時半に搭乗手続き、パスポートを見せて座席指定をして、オイルサーチャージ800円を支払う。
券売機で港の利用料500円のチケットを買う。
カウンターで受け取った入国審査と税関審査の用紙に記載する。
その後14時まで待って、出国審査。
周りを見回してみると、会話を聞いてみると、韓国に戻る人の方が多そうだった。
ビートルの作成したガイドブック『Beetle Busan Book』をもらう。
http://www.jrbeetle.co.jp/magazine/index.html
これがコンパクトな割にはなかなか優れもので、
『滞在中は地球の歩き方』ではなくこちらを主に参照していた。


免税店があるけど、例によって興味がない。
しかし、売られていた缶ビール、スーパードライの500mlが200円。
余りの安さにフラフラっと買ってしまって下の待合ロビーで飲み始める。
大きなモニターではNHKではなく民放が映されていた。
今回の震災後初めて、民放を見た。
被災地の状況ですって避難所の前でずっとリポーターの顔が映し出されて喋ってる。
これを映像で見る必要性ってあるのだろうか?
そして中継がひと段落するとCMってことになって最近話題のACの素材が。
あーこれが「ポポポポ〜ン」か…(しかも、珍しい?1分のフルver.を見た)
趣旨はわかる。挨拶は大切です。みんなで挨拶しましょう。
でもこれが1日中繰り返されていたら、神経を逆撫ですることになりそう。気が狂いそう。
僕だったら怒るな…
いや、僕のような人間が民放を見てなくてよかった。
Twitterでよく震災後の民放の放送は不快なものが多く、局ごとの違いもないから
今この時期は不要だという意見が多かったので、僕もけしからんのだろうと思っていた。
だからTwitterに「初めて民放を見た。ラジオと動画配信だけでよい」と書いた。
だけど、(年配の方はテレビだけが情報原とならざるをえないことも多いですよという指摘も受け)
後になってから思うに、そのときの自分はかなり近視眼的だったような。
地震があってからの1週間、自分はどんどん視野が狭くなっていった。
Twitterもテレビもメディアとしてはどれもひとつの手段に過ぎないのに、
非常事態なのをいいことに、個人の主観というか好き嫌いだけで
短絡的な判断をしてしまうようにいつのまにかなっていた。
民放を見たくないなら、自分がそのとき見なければいいだけのこと。
受け入れること、想像すること、人として大事なこの2つが僕から失われつつあった。


そのテレビの向こうで14時46分、黙祷がなされた。


15時になってフェリーに乗り込む。
「ビートル」ではなくて「コビー」だった。
前者はJR九州が、後者は韓国の会社が運営している。
なので乗務員も皆韓国人だった。ここから既にして韓国が始まっている。
2階の1人掛けの席。出航する。
船内のアナウンスによるとこの高速フェリーは飛行機のエンジンを使用しているとのこと。
窓の外を眺めているとずっと湾の中にいるようでいて、遠くに陸地が見えたり消えたり。
iPhoneの電波が通じていたので地図を表示させてみると壱岐
そしてああ、ここが玄界灘なのか、と知る。
陸地が見えなくなると缶ビールを飲みつつ『カタロニア賛歌』を読んで過ごす。


僕の予想と違っていたのは
このビートル/コビーはデッキがあって外に出られるということはなく、
席に座っているしかないということだった。その分小さくて高速になるわけか。
残念ながら旅の気分は今ひとつ。移動手段としての利用に軸足を置いている。
もう1つ就航している路線、ニューかめりあは「海の上のホテル」を謳うだけあって
大きくて、展望デッキやレストランに始まり、風呂やカラオケまである。
可能なら、行きはかめりあで帰りはビートルというのがよいのではないか。


18時。うたた寝しているうちにあっさりと釜山に着いてしまう。
山の斜面にへばりついた町のようだ。
巨大な橋が建設中で、橋桁だけが海から突き出ていた。
ヨーロッパからの貨物船がいくつかドック入りしている。
超高層ビルがいきなりニョキニョキと生えている。


船を下りて、目の前に大きな下関からの客船が停まっている。
入国手続き、税関。何事もなく通り抜けてターミナルを出る。
目の前にバスが停まっている。釜山駅までのシャトルバス。
1,000ウォンなので日本円だと100円もしない。
ホテルは釜山駅のすぐ近く。
乗ってもよかったんだけど、時間もあるし、1駅だしと歩き出す。