『世界屠畜紀行』『飼い喰い 三匹の豚とわたし』

世界屠畜紀行 THE WORLD’S SLAUGHTERHOUSE TOUR (角川文庫)

世界屠畜紀行 THE WORLD’S SLAUGHTERHOUSE TOUR (角川文庫)


先月、『食人族』を借りて観た。
人を殺す部分はどうってことないけど(つくりもんだし)、
途中、素で××を殺して食べるシーンだけはグロくてダメだった。
そのことを facebook に書いたところ
これ読むといいですよという話になったのが
内澤旬子のイラスト付きルポルタージュ2冊。


『世界屠畜紀行』
 http://www.amazon.co.jp/dp/4759251332/


飼い喰い 三匹の豚とわたし』
 http://www.amazon.co.jp/dp/4000258362/


持ってるんで貸しますよという方がいらっしゃって、
合わせて『いのちの食べかた』や『フード・インク』といった
ドキュメンタリー映画のDVDも一箱セットで届いた。


で、さっそく読んでみる。面白くて2冊イッキに読んでしまった。
内容はタイトルの通り。
『世界屠畜紀行』は韓国・エジプト・アメリカからチェコ・モンゴル・沖縄まで
世界各地の屠畜場を訪れて、運ばれてきた牛や豚が切り開かれ、解体されて
我々が普段口にする「肉」となっていく過程をつぶさに追う。
品川の芝浦屠場には足しげく通う。
その後、ということで革なめしの工場も訪れる。
物理的な行程だけではなく、そこに差別はあるのかということも探っていく。
それはどこから生まれるのか、どのような形で存在するのか。
(どうもアジア圏以外には存在しないようだ)
それは命の在り方、命との向き合い方について考えることになる。
動物を殺して食べることは罪悪なのか、「かわいそう」なことなのか。
我々の生活から屠畜の過程が隠されているのは確かに
何かしらの問題を孕んでいるように思う。


飼い喰い 三匹の豚とわたし』はもっとすごい。
実際に豚を半年間飼育して、それを自ら屠畜場へと運ぶ。皆でそれを食べる。
三匹の豚には名前をつける。日々ひとりで世話をする。
愛着が沸いても、それでも「かわいそう」だからやめようとはならない。
この潔い発想力と実行力に驚かされる。


親戚の家では山羊を飼っていたとか、鶏を飼っていたとか
そういうことを思い出す。
正月になると鶏はつぶされる。煮たり焼いたりして食べる。
(もちろんそれは家長の仕事だ)
鶏を絞める場面にはどうしても立ち会えなかった。
なんだか、人間として退化しているように思う。
「かわいそう」ではなく、ただ単純に怖い。
食べる・食べないに関係なく、今目の前に生きているものを殺すということが。
そこに余計なことを被せて見てしまっているんだろうな。
ぼんやりと文化とか文明とか呼ばれているものにすがらないと不安というか。


慣れると僕にも屠畜ができるようになるんだろうか。
手取り足取り教えてもらって、実地に経験を積んでいけば
誰でもできるようになるんだろうな。
じゃあやりたいかと言えば、正直尻込みしてしまう。


日々虫は簡単に殺している。
その差はなんだろうと考え出すと、よく分からなくなってくる。