太宰の記念館

太宰治佐藤春夫に送った書簡が見つかったというニュースを昨日見かけた。
昭和11年。まだ20代後半になったばかりで文壇デビューしたばかり。
薬物中毒に悩み、お金に困っていた。
書簡では芥川賞をなんとかもらえないものかと切々と綴っていた。
facebook で身の回りの人が何人もシェアしていた。
村上春樹の新作が発表されることになってもこれほどシェアされることはない。
太宰はやはり人気があるのだな、と思う。


「岡村というと太宰」と一部で思われているけど
実はもう何年も読んでいない。
それでいて『津軽』はいろんな人に薦めている。
素の太宰の人間性が覗けてこれが一番面白いし、泣けると。
「タケ」という太宰文学上で最も愛すべきキャラクターが登場し、
久しぶりの再会で穏やかな時間を過ごす。


北津軽郡小泊村(今は中泊町)に「津軽の像」記念館がある。
http://dazai.or.jp/modules/contents/class-a05.html
太宰とタケが並んで座って運動会を見ている名場面の像と
いくつか建物内に展示があるだけ、
ここは『津軽』とタケの由来の地であるというだけの慎ましい記念館。
行く前は他に観光資源はないのか… と引いてしまったけど
いざ行ってみると「いや、これでいいんだ」と思い直した。
小説の中の一場面が記念館になっているなんて他にどれだけあるだろう。
全世界的に見てもそうそうないんじゃないか。
作者自身の記念館や○○の戦いといった歴史的事実の記念館ではなく。


日常生活における文学とのちょっとした関わり方として
こういうのもっとあってもいいんじゃないかと思う。
松山に『坊っちゃん』の、首都高に『1Q84』の記念館が。
ニューヨークだとポール・オースター辺り既にありそう。