情景2

最初の雪が舞い降りてきた。
ゆっくりと、ゆっくりと、静かに。
目の前をふっと通り過ぎて
白い地面にかき消される。


見上げると次のひとひらが続いていた。
やがて無数の粒子が降り注ぐ。
分厚く重なり合った灰色の雲の隙間から
果てしなく、時間が止まったかのように。


細かな白い綿毛が絡みあって
隣のひとひらとつながりあって。
限りなく落ちてくる。
この世界を灰色に染める。


風はまだなく、雪はただ重力と冷たい空気に従う。
僕はそっと手を伸ばし手袋の上にそれを受け止めようとする。
白い綿毛がわずかに転がって掌から零れ落ちる。
また次のひとひらが取って代わる。


人気のない公園。
娘が僕の真似をして毛糸の手袋を前に差し出す。
毎日毎日繰り返し見つめているのに
いつだって初めてのように目を細めている。


僕にそれを見せようとするが
振り向いて僕に近づこうとしているうちに
いつの間にか消えてしまう。
消してしまったのが僕であるかのように、プイとまた前に向き直る。


僕はそんな娘をずっと見つめている。
飽きてしまった娘が僕の袖を引っ張る。
無言で公園を後にする。
その頃には灰色だった世界が白く生まれ変わっている。


自動車が通りすぎていく。
交差点で止まって、寒さに震えている。
僕は娘の手を取る。
信号が青になるのを待つ。