歌謡曲というもの

毎日新聞の夕刊のコラムで編集委員の方が書いていた。
年代的に自分も身の周りも昭和歌謡が好きな人が多く、
誰が一番歌がうまいだろうという話になると。
女性だと圧倒的に美空ひばり
男性だと票が割れる。その方は石原裕次郎はどうかと思う。
技巧的に上手、ということはない。
しかしあの声に節回し、皆が裕次郎の歌は自分でも歌ってみたくなると。
いい歌手ってそういうことなのかもしれない。


話変わって。
向かいの机には50ぐらいの男性が座っている。
運用を担当しているチームなので一日中忙しい。
あるときから体調不良でよく休むようになった。
どういうことか、ハードワークで疲れたのか、と思っていたら真相は違っていた。
親が危篤状態にあって兄弟が交代で付き添っていたのだという。
そのことを知った頃には既に遅く、契約を今月までとして交代要員を探し始めていた。
来月から仕事につけるかどうかはわからない。少なくとも僕らは。


かといって、その状況を知ったからといって
月に半分も来れないという状況を許容するわけにはいかない。
誰がその金を払うのか。見合った仕事になっているか。
逆に言うと、月に半分しか来れなくてもいいからこのままいてほしい、
というような高いスキルではないわけで。
世の中は厳しい。
僕も10年後、そうなっているかもしれない。


帰ってきて食事を終え、テレビのチャンネルを変えると『72時間』
新宿の DiskUnion の「昭和歌謡館」だった。
シングルや LP などの中古レコードが壁際のラックにびっしり詰まっている。
いろんなタイプの、マニアが集まってきていた。
岡田有希子のファン、2カ月で1,500枚のシングルを買って金に困って売りに来た男性、
本田美奈子など80年代の歌が好きで将来は自衛隊に入るという17歳、
歌の好きだった母親が入院して病状が思わしくなく、
父親と交代で世話をしているという若者。
息抜きのためにこの店に来るという。


こういう店で働いたほうが僕にとっては幸せだろうか、と話すと
妻はそんなことはないだろうと。
好きを仕事にするのは難しいと。


店の中では昭和歌謡が流れている。
1枚300円から数万円まで。
珍しさという基準で値段が付けられ、血まなこになって探す。
店の中では一日中、雨の日も雪の日も、かつてのヒット曲が流れている。