今年最後の

東京に住んでいると雪が降ることは滅多にないから、
あの時降ったのがこの冬最後だったな、と思い出すことができる。


しかし、青森のような雪国に住んでいると
いつが最後の雪だったのかというのは全く記憶にないもので。
気がつくと春になっているというか、
気がつくと雨が降るようになっている。
そしてもちろん、あれがこの春最初の雨だった、
なんてことも覚えていることはない。


最後の夕立だったとか、最後の入道雲だったとか。
季節の変わり目は暑さ寒さに敏感なようでいて、
案外それ以外のことは無頓着なのかもしれない。


ああ、あの人と会ったのはあれが最後だったんだな、
と思い返すことがある。
大学の寮で毎日のように顔を合わせていたのに
卒業したらその後一度も会っていない、とか。
その時にはそれが最後だとは夢にも思わない。
これまでの日々が続くものと思っている。


何人もの人たちが「それっきり」になってしまった。
恩を返せなかったり、つまらないことを言ってしまったり、
えてしてそんな状態のまま、それっきり。
取り返しが付かない。
それはある意味、人は今に生きているということなんだろうけど。


ダラダラ、漠然と日々過ごしているとそんなことになってしまう。
もっともっといろんなことに心開かねばと思いつつも、
おっさんの僕は疲れてしまっている。
そんな言い訳から、そろそろ抜け出さないと。