昨晩は寒い日で、先に帰った妻で鍋を作って待っている。
なんでも鑑定団の再放送を見ていたら
70年代、80年代の未開封のプラモデルを鑑定に出している方がいた。
プラモデルの歴史となる。
そういえば僕は子供の頃、特にプラモデルにはまらなかったな。
というか、違う。そんな裕福ではなかったので買ってもらえなかったのだ。
でもまあそれでよかったと思う。
急いで雑に作ってそれっきりになる。
実際3つか4つは作ったことがあるが、どれも大体そんな感じ。
もうひとつそう言えばで言うと、ラジコンもない。
コロコロコミックでそういう漫画を見て憧れても
プラモデル以上に買う余裕がなかった。
当時はしっかりした製品ばかりだったので
誕生日に買ってもらう、という額ではない。
何もすることのない午後、部屋の中に差し込む光があると
小さな鏡で天井や壁に反射させて自由自在に動かす。
だけどそれが楽しいかというとそんなことはない。
手先の器用な叔父があるとき、車に乗って山の中に連れていってくれた。
冬の近い、秋の日だったように思う。
山奥にひと気のない広場があって、ラジコンのヘリコプターを取り出してエンジンをかける。
両腕でようやく抱えられるか。けっこうな大きさがある。
ブーーンという音がして浮かび上がり、
空中を少し進めては戻してまた別の方向へ、というのを繰り返す。
小学校の低学年だったら「わー」と思いながら見ていただろう。
高学年だったら「やらせてやらせて」と無理やりせがんだろう。
中学生でしかも1年生だったので、微妙な、複雑な気持ちで眺めていた。
僕ももう、大人だからさ、というような。
実際叔父が僕に「やるか」と声をかけることもない。
叔父が日々大事に手入れにしているのだから仕方がない。
なんで僕をここに連れてきたのかもわからない。
ただ、視界の隅を行き来するヘリコプターをポケットに手を突っ込んで眺めるだけ。
一緒にいた従兄弟も触らせてもらえない。息子だからなおさら。
四人か五人で、無言で、眺め続けた。
終わってヘリコプターが草地に下りてきて叔父はケースにしまい、僕らは車に乗って帰った。
叔父も無口な方だし、帰りの車では特に誰も話さなかったと思う。