「牛丼肉盛り実技グランドチャンピオン大会」

昨晩たまたま見た番組で
牛丼の肉を丼に盛りつける技術を競う吉野家社内のコンテストをやっていた。
全国を5つのブロックに分けて代表の6人が技を競う。
(関東ブロックは代表が2人)
年に1人、グランプリを決める。
選考基準は多岐にわたり、グランプリ該当者なしの年もあるのだという。
実際、2018年がそうだった。
 
全国の社員2万2,000人の代表だけあって、相当レベルが高かった。
盛り付けが速くて正確。
47個の穴の開いた特製のおたま(専従の職人が1人で1日20本作製するのだという)を
右手に持ち、肉を掬う。
これって1回でがばっとやって乗せるのではなくて
何回もくぐらせて少しずつ肉の量を整えてからなんですね。
で、この回数も少ないほどよい。その分早く提供できる。
優勝者は5回でスムーズにこなしていたけど、他の競技者は小刻みに7・8回行っていた。
ここが勝敗を分けたのだろうか。
乗せた後の右手の返しに無駄がない、というのも高評価につながっていた。
 
特盛は肉が2倍になるけど、普通盛を2回乗せるのではなく、
1回目が1.2で2回目を0.8と分量を調整することで盛の美しさを出すという。
それが皆正確でもちろん速かった。
つゆだくのオーダーが入ると肉を盛ったおたまを一度丼の上に持っていくが
肉は乗せず空振りさせることでつゆのみをかける。そのあとで肉を乗せる。なるほどなあ。
競技者の一人はおたまを持つ高さを調節することで多めのつゆと牛肉を合わせて乗せていた。
頂点を目指して全国の社員が技を磨き、工夫している。
吉野家の舞台裏はこうなっていたのかと改めて感心させられた。
どんな分野にも極めつくし、もはや芸術と呼んでいいような職人技があるのだな。
その吉野家には確か800ページのマニュアルがあると番組では言っていたように思う。
 
このコンテストの何がすごいかって言うと、リアルの店舗で実施するということ。
となると一日の売上、来店数No.1の有楽町店。
ここで制限時間の間、実際のオーダーを次々にこなしていく。
グランプリ、準グランプリの2人はただ盛り付けるだけではなく
こちらの席どうぞ、とか、新商品のおすすめなどよく通る声で伝えていた。
肉を盛り付ける場が店の中心にあって、店の様子が見渡せる。
ただ目の前の丼に集中するのではなく、そういうところまで気を配れるか。
どこまでも高みがあるんだな。いやーすごかった。
 
有楽町店は僕も何度か利用したことがある。会社帰りに立ち寄って入ってみたり。
よく思い出すことがある。
ある日、バイト初日なのか数日なのか初老の男性がカウンター周りを担当していた。
品のある外見で元々は大会社の事務職だったのがリストラされて、という雰囲気。
だけど仕事が全くできない。注文されたのを忘れるし、お会計を求められてもすぐ動けない。
モタモタして間違う、の繰り返し。
いやー、大変だなと気の毒に思った。あの後クビになったんじゃないだろうか。
有楽町店が日本一の店だと知ったのはその後。
あの忙しさの中で覚束ない初心者を投入したらいかんよな、とも思った。
今はどうなのだろう。