最近のいくつか

昨日、石神井公園の「辰巳軒」について書いた。
仕事が休みなのか、初老の夫婦が20代の息子を連れて三人で定食を食べていた。
その隣では老夫婦が向かい合ってゆっくりゆっくり食べていた。
その他は男性一人客がテーブルに一組ずつ。
僕のようにネットやテレビで知って初めて入って
壁に貼られたメニューをキョロキョロ見てハムカツを頼んだ人もいれば
いつもの決まった席があるのか迷いなくそこに座って「A定大盛で」という常連もいた。
 
ある常連の方は注文を終えてスマホをひとしきり眺めた後でやおら立ち上がり、
隅の『町中華で飲ろうぜ』で言うところの「図書館」へ。
本棚があって本が並んでいるわけではなく、
この店ではカウンターの端に置いてあった箱に積み上げられただけ。
クッキングパパ』とかそんなのが雑多に。半ば色あせてボロボロになって。
彼はその一番上にあった本を特に見もせず手に取って席に戻って読み始めた。
流れるような無駄のない動きだった。
 これぞ常連、かくあるべし、と惚れ惚れした。
もしかしたらもう何回も読んでいるのかもしれない。
でもそんなことどうでもいいのだろう。
 
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先日、妻と夜の散歩をしながらあれこれととりとめなく話す。
その中で話題になったのが、
「I Love You」という一文を夏目漱石が「月が綺麗ですね」と訳したのは
百歩譲ってまだいいとして、逆は成り立つのかと。
「月が綺麗ですね」を英訳したときに「I Love You」とするのは
いろんな意味で問題があるんじゃないか。
(外国語を母国語に訳すのか、母国語を外国語に訳すのかが関係してくる)
 
もしそれが許されるのなら
「今日木曜だからゴミ捨てといて」も「ニラレバ炒めお待たせしました」も
皆「I Love You」で事足りてしまう。
後は文脈と背景で判断して、と。
 
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世の中には知らない単語が山のようにある。
今日もひとつ覚えた。
障子の下のレールに貼っているテープ、あれは「敷居すべり」と呼ぶのだと。
新築から十数年。和室のそこのところがボロボロになって障子がつっかえるようになった。
昨年の春、リフォーム業者に頼んで家のあちこちをちょこちょこ修理した時にそこも伝えたら
ホームセンターに行けば売ってるので自分で直した方が断然安上がりですよと。
それを1年以上ほったらかしてようやく重い腰を上げた。
 
今朝、島忠に行って探すが障子のコーナーには見つからず。
店員の方を捕まえて「障子の下のレールの……」と説明したら23番のコーナーだという。
行ってみるとそれらしきものがない。どうも敷居につけるキャスターと思われたようだ。
大小さまざまなローラーが部品として並んでいた。
もう一度今度は別の店員を捕まえて
「障子の下のレールの……、キャスターじゃなく受ける方」と言ってようやく伝わった。
26番のコーナーだった。
買ってきた今となっては「敷居すべり」以外の何物でもない。
名前がついてしまうとそうとしか呼びようがないが、
その名前を知らないと説明に困ってしまうものがこの世界にはまだまだたくさんある。
まあ、障子が滑らかに滑るようになったからいいか。