先週買ったCD #8:2020/11/30-12/06

ボーナスを前にした谷間の時期。
 
2020/11/30: セカイモン
Happy Mondays 「Pills"n"Thrills & Bellyaches Collector’s Edition」 \6856
 
2020/11/30: www.amazon.co.jp
怒髪天 「~酒唄傑作選~ オヤジだヨ! 全員酒豪」 \164
 
2020/12/02: TowerRecords 光が丘店
羅針盤 「永遠のうた+アドレナリンドライブ」 (\2090)
タワレコのポイントで
 
2020/12/05: www.hmv.co.jp
Fountains of Wayne 「Utopia Parkway」 (\660)
Jamie Cullum 「Twenty Somthing」 (\330)
HMVのポイントで
 
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Happy Mondays 「Pills"n"Thrills & Bellyaches Collector’s Edition」
 
Happy Mondays のこのアルバムが発表されたのは1990年。
僕は高校一年生だった。
洋楽を本格的に聞き始めた頃で、Rockin'on を初めとして
どの洋楽誌もマンチェスター、マッドチェスター一色だった。グランジはまだだった。
合法的なもの、非合法なもの、全てを呑み込んだ享楽的で退廃的なダンスフロアの時代。
サイケなギターロックとダンスビートを組み合わせた The Stone Roses は神の扱いだった。
以下、Inspiral Carpets が2番手、Happy Mondays が3番手、The Charlratans が4番手
という感じだったように思う。
以後、雨後の筍のようにいろんなバンドが青田買いされて猫も杓子もデビュー、
日本盤が発売されたけど残らなかった。
でもこの4バンドの作品は今聞いても古びていない。
個人的には The Stone Roses の1枚目と Happy Mondays のこのアルバムは双璧をなす
世代を超えた名盤だと思う。
クラブDJとして後に『DJ Magazine』でも世界一にも選ばれた
ポール・オークンフィールドがプロデュースを担当していて、
ここまで身体の快楽原理を知り尽くした音はない。
 
でもこの当時の「Pills ...」は音の抜けがよくなくて。
日本盤は”Hallelujah”などのシングルも収録されていて
ベストアルバムのように秀逸なトラックリストだったんだけど。
リマスターされないのかなー、とずっと思い続けたまま。
でも昨年のある時ふと調べてみたらとっくの昔にリマスターされていた。2007年。
ひとつ前のアルバム「Bummed」と共に。
ありがちなことに CD は2枚組の Deluxe Edition のみ発売で、とっくの昔に完売。
僕がその存在を知った昨年の時点では amazon にも DiskUnion にも在庫なし、ヤフオクにも出なかった。
気長に待っているうちにようやく先月「Bummed」を amazon の中古で4,990円で入手。
「Pills ...」はセカイモンだったら長期出品されているのを少し前から気づいていて、
ボーナス時期が近づくのを待って落札。
イギリスから届くまで時間がかかってやっと先週手元に。
 
セカイモンは海外の最大級のオークションサイト eBay の日本語版というか。
アメリカ、イギリス、ドイツの商品が出品されている。
僕としては最後の手段はここ。
もちろん輸入盤のみ入手可能、国内の紙ジャケSHM-CDなんかは手に入らない。
 
入札金額だけではなく、セカイモンへの手数料が800円かかってさらに
この場合イギリス国内の配送料と国際送料がかかる。
今回だと
入札金額:5490円
セカイモン手数料:800円
英国内配送料・保険料:567円
英国内諸税:0円
国際送料:3,575円
関税・消費税:0円
なんだかんだで入札金額の倍ぐらいかかる。
このうち国際送料は落札時点では決まらず、
日本に荷物が届いたときに確定してセカイモンからメールで通知され、
代引き扱いで宅配便業者に支払うことになる。
それ以外の入札金額、セカイモン手数料、英国内配送料は落札時にカードやPayPalで支払う。
僕はPayPalにしている。
 
これまでいくつか、国内で入手するのを諦めてセカイモンで入手してきた。
Everything But The Girl 「Love Not Money Deluxe Edition」 \2578
Everything But The Girl 「Worldwide Deluxe Edition」\3772
Aurora 「Infections of A Different Kind」\3921
※落札金額のみ、国際送料含まず。
衣類や玩具の場合、海外とのやり取りだと配送時に商品が破損していたり
色がイメージと違っていたりとあれこれトラブルもあるようだけど
僕の場合はCDなので一度も問題は起きなかった。
出品者の添えた写真と英語の説明でだいたいのコンディションがわかる。
 
AuroraのアルバムはCDの出回った量が少なかったようで全然見つからず、
最後の手段として利用したんだけど、
届いた翌月、国内盤が数年遅れで初めて出ることになって失敗した。
そういうこともある。
 
今回も結局1万ぐらいかかったけど、どうしても欲しかったのでまあいいかと。
想像以上にきれいな音になっていて大満足。
ジャケットに描かれた、派手な赤、黄、青、緑、サイケデリックな色彩が頭の中で
終わらないパーティーを繰り広げる。
イギリスで巻き起こったセカンド・サマー・オブ・ラブ、その落日の頃。
 
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怒髪天 「~酒唄傑作選~ オヤジだヨ! 全員酒豪」
 
先日、バラクーダのことを書いた。
”チャカ・ポコ・チャ”と”日本全国酒飲み音頭”が
同じグループによるものだったなんて知らなかった、今年一番の衝撃だったと。
その、酒が飲めるぞの”日本全国酒飲み音頭”を怒髪天がカバーしていたなと
amazon で中古が安く売っているのを入手。
 
怒髪天と言えば、昭和ダメ男の哀愁と開き直りを歌うというかがなる、
男の花道、直球ど真ん中のパンク。
ロックの醍醐味は心根と大声で決まると言わんばかりの。
最初にいいな、と思ったのはフラワーカンパニーズの武道館公演のDVDで
(これは見に行けずとても後悔した)
”それゆけ~フラカン~”みたいなアカペラの歌が開演前に流れていた。
男が男を送る歌。男が男に惚れる歌。
 
このアルバムはその怒髪天の酒がらみの曲を集めたもの。2015年。
冒頭の”宜しく候”は新曲。
”酒燃料驀進曲”は結構昔のシングルだったかな。
”ぐでんぐでん”はショーケンのカバーのようだ。
 
そして問題の”日本全国酒飲み音頭”これがすごい。
仲間のバンドを集めて大合唱。
全部書ききれない。
しかも元祖に当たるバラクーダの岡本圭司、及川ちかし、元メンバーのベートーベン鈴木も参加。
このレコーディングすごかったろうな。
歌い終えたら即宴会でとんでもないことになっただろうな。
こういうものこそ、ロックの裏歴史として映像に残しておいてほしかった。
なんにせよこの1曲のためだけでも買いな1枚。
 
なお、このアルバムの発売を祝してのライヴが渋谷の O-EAST / O-WEST でフェスっぽく?
開催されて、上記合唱にも参加した SA や Scoobie Do が参加、
八代亜紀もゲストで登場したという。
メンバーたちも”増子直純ご当地グルメ実演販売””坂詰克彦の人生相談”
というコーナーを受け持ったようだ。
これも見たかったな……
 
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日本を代表するアンダーグラウンドで自由な音楽の数々、
無数のバンド、ユニットで演奏してきただけではなく
幼児の落書きのようでいて深淵な思想を思わせるイラストを書いたり、
日常風景の一コマを切り取った味わい深い写真を撮影したり、
ライヴハウス”難波ベアーズ”の経営や、
『ギンガ』といった作品集に集結する文筆業など多彩な面を持つ鬼才、山本精一
変人と称されることもあるけど、
僕はただ単に input / output の引き出しが人よりも格段に多い人なのだろうと。
いや、天才とはそういう人のことなのか。
(若い頃は営業としてサラリーマンの経験もある)
 
BOREDOMSがスカムでジャンクでトライバルでトランシーな関西サイケデリア界のスーパーバンド、
想い出波止場がこの世に存在しないものも含めて古今東西の音楽をミキサーに放り込んだ音、
だとしたら、羅針盤はそれら全てを取っ払ったあとに残った純粋無垢な”歌もの”。
ドラムやキーボードといった最小限のバックをつけて、ギターを弾きながらフォークな曲を歌う。
ただそれだけ。なのにこのグループが最も闇が深く、その先に浮かび上がる光も強い。
山本精一という人の呼吸、息遣いがそのまま音に刻み込まれているからなのだろう。
 
最初の3枚は BOREDOMS つながりなのかワーナー・ジャパンから。
その後はインディーズで活動。
その最初の3枚が2009年、P-VINEからSHM-CDで再発。
その際に2枚のシングルをまとめた編集盤として発売されたのがこちら。
1枚目「らご」からの名曲”永遠のうた”と
3枚目「ソングライン」の頃の”アドレナリンドライブ
 
矢口史靖監督の同名の作品の主題歌。
主演の二人、石田ひかり安藤政信のすっとこどっこいな逃避劇なんだけど、
キャストやスタッフを見返してみると二人を追いかけるヤクザは松重豊だったんですね。
矢口史靖監督は突拍子もないものを集めてひとつにするんだけどどこかずれてて、
それがゆるーい笑いとポップな空気感を生む。稀有な才能だと思う。
PFFぴあフィルムフェスティバル)でグランプリを獲得した『雨女』の
全力疾走で爆発するアバンギャルド
PFFスカラシップを獲得してつくった『裸足のピクニック』の”追手のいない逃走劇”は
もっと評価されて欲しい。
 
そのどこかずれたゆるいポップ感というのが羅針盤と波長が合ったんだろうな。
このシングルでは平山ミキ”真夏の出来事”を本人の歌唱でカバーしている。
この曲もRCサクセション”スローバラード”のように
悪い予感、悲しい出来事という一言を歌詞に忍ばせることで
幸せな二人だけの光景を綴れば綴るほどやるせなくさせてしまうという名曲。
 
アドレナリンドライブ”は”リフレイン”と改作されて「ソングライン」へ。
このアルバムこそ、彼らの最高傑作だと思う。
タイトルがいいんですよね。歌の道、歌の連鎖。
パタゴニア』で知られる紀行作家ブルース・チャトウィンの最晩年の作品のひとつ。
文字や地図を持たないアボリジニは歌でその土地への道筋を、
それらをつないで浮かびあがってくるこの世界を、伝えてきた。
歌というものは1曲ダウンロードしたら iPhone で聞いてカラオケで歌って終わりというものではなく、
その土地で人々が生きていたという記憶や歴史の中から歌い継がれてきたのが本来。
遠くから来て未来へと連なるもの。
山本精一にはそれが分かっていたから、このタイトルにしたのだろう。