運命の二人

こういう設定を思いつく。
連作用のアイデア
 
地球から遠く離れたその星に住む人類にも男女の性別があった。
惹かれ合い、共に生きることを選んだ二人は
(つまるところ、地球で言うところの結婚をした二人は)
石を交換する。それは首から下げた袋に入っていて、
生まれ育ってから今その瞬間までその人と共にあった石だ。
 
石を交換した二人は、それが運命の二人、
定められた正しい組み合わせの二人ならば
やがてその姿が互いに似ていくようになる。
何十年もかけてゆっくりとそれは進んでいき、
あるとき身長・体重共に全く同じ姿となる。
(厳密に言うと、子育てを終えた最後のステージでは
 生殖器官の大きく異なっていたのも変化していく)
 
その二人は成就した、ということになる。
もはや悪いことはできない。
その時が来たならば親類縁者、近くに住む者たちを集めて
盛大に祝い事を行う。
 
その社会では鑑定人が重要な役割を担うことになるだろう。
例えば一年に一度写真を撮ったものを保管していて、
前回よりもさらに姿が似てきたということを判定する。
最後に、同一になったことを認める。
 
互いに激しく惹かれ合い、恋焦がれて一緒になっても
全く姿が変わらないままという二人もいる。
鑑定人が最初から三回連続で何も変わっていないと判定したならば
諦めてその二人は諦めないといけない。
石を元に戻す。
(諦めきれずに遠くの地へ二人きりで逃げるということもあるだろう。
 あるいは、整形手術を行うか。
 なんにしても見つかった場合は厳罰が下される)
 
運命の二人はやがて年老いて、片方が亡くなる時を迎える。
喪に服す時期が終わった時、自分がどちらであったのか忘れてしまっている。
共に生きることを選ぶ前の、一人でいた時代の自分とは大きく変わっている。
そこに戻ることはできない。
子供たちもパパ、ママという呼び方をやめて、もっと別な、
男女の性別に基づかない呼び方を選んでいるだろう。
 
(もっと言うと、互いに似るというよりも
 人類共通のひとつの容姿に向かうという方がよいか。
 いや、それはやりすぎか)