先週買ったCD #44:2021/08/09-2021/08/15

2021/08/10: diskunion.net
BARBEE BOYS 「√5」 \2650
 
2021/08/10: www.amazon.co.jp
久保田利伸 「The Baddest」 \1
 
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BARBEE BOYS 「√5」
 
BARBEE BOYS はこの「√5」で全国区へとブレイクした印象がある。
1989年。オリコンヒットチャートで初の1位。
CMに起用されたシングル ”目を閉じておいでよ” も大ヒット。
今もバービーと言えばこの曲、という人は多いだろう。
僕は中学生で、周りがこぞって聞き始めた。
実際にはその前年、国内アーティストでは初めての
東京ドームでのライヴを実現しているので、
突然大ヒットしたというものではない。
 
他の地方ではどうだったかはわからないが、
青森での人気はその前から根強いものがあった。
当時の毎日新聞青森版では週に一度、
青森市のレコードショップ(確か PAX だったと思う)の
売上枚数ランキングを載せていた。
洋楽は U2「魂の叫び」がひた走りに首位を独走して、
邦楽は BARBEE BOYS のシングルが入れ代わり立ち代わりだった。
”なんだったんだ? 7Days” ”女ぎつね on the Run” ”チャンス到来”
ツアーで青森によく来てたのかもしれない。
米米CLUB ”嫁津波”もラインクインしてたことを思い出した)
 
毎週何とはなしに見ているうちに不思議なタイトルの曲だなあと興味を持って、
ちょうどその頃、ひとつ上の従姉妹がチェッカーズを卒業して
BARBEE BOYS にはまった。
部屋に入ると「BLACKLIST」のポスターを貼っていた。
テープをダビングしてもらって僕もすぐ夢中になった。
 
なんてったって ”女ぎつね on the Run” が最高にかっこよかった。
僕にとって新しい世界のドアが開いた。
KONTA と杏子の掛け合いのヴォーカルが
男女の恋の駆け引きをストレートに体現していて、
それが一度聞いたら忘れられないがむしゃらで切ないサビへ。
三ツ矢サイダーのCMにも使われていたせいか、清涼感があった。
今思うとギターを始めとして楽器の配置とその間合い、
ひとつひとつの音の鳴り響き方に絶妙なものがあった。
 
いまみちともたかの天才的なセンスがなせる業だったのか。
ギターはメロディラインを弾きまくるというよりも
抽象的なフレーズを散りばめて空間を構築し、埋めていくだけ。
ギターそのものは一歩引いたところにあるのに
楽曲全体としてとても強い印象を残す。
今聞いてもなぜこんなギターが弾けるのだろう? と不思議に思う。
ハードロック以外で、日本を代表するギターロックというと
僕にとってはやはりバービーってことになる。
 
歌詞もそのいまみちともたかが書いてるんですよね。
大人になって改めて歌詞を読んでみて驚いた。
これは日本語なのか、と首を傾げるぐらい感覚的で
意味の通る文章になってない。
一人の人間の頭の中、
密室で繰り広げるその二人にしかわからない会話の中を
ここまでリアルに切り取ることができるものなのか。
でもそれを歌に乗せて聞くと全然違和感がない。
そこもまた、天才的だった。
(それゆえに解散後のいまみちともたかの不振は残念でならない)
 
そんなわけで今も普通に BARBEE BOYS を聞く。よく聞く。
「3RD. BREAK」と「LISTEN! BARBEE BOYS4」と
1枚目2枚目の曲とシングルのB面をリミックスした「BLACK LIST」と。
彼らと出会った中2の夏以来、ずっと変わらず。
従姉妹にダビングしてもらったテープで。
大人になってからはCDを買い直して。
 
逆に、「√5」以後は聞かない。
発売時には自らカセットテープのアルバムを買ったというのに。
(正確にはその一つ前、サントラとして出たミニアルバム「JUST TWO OF US」からか)
「BLACK LIST」までのアルバムに思い入れがありすぎるというのもそうだけど、
一言で言うと「√5」は普通になってしまった。
 
いや、もちろん、”噂ばなしはM4”とか”もうだいじょうぶヒステリー”とか
バービーらしい曲名、曲の雰囲気は昔と変わらず。
”さぁどうしよう”なんて3枚目に入っていてもおかしくない。
なんというか、それまでのバービーは異形の魅力、はみ出し者の魅力だった。
なのにそれがメインストリームになってしまうと大事なものが失われてしまうというか。
”目を閉じておいでよ” や ”chibi” なんて普通にいい曲。
スケールが大きくなって普通が、普遍になったとすら思う。
この喪失感、昔はもっと知る人ぞ知るツウ好みのバンドだったのになあ、
という悔し紛れの気持ちなんだろうな。
 
なので2006年、過去のアルバムが紙ジャケで再発された時に
「BLACK LIST」「JUST TWO OF US」まではすぐに買ったけど
「√5」は買わなかった。
最近になってコンプリートしとかないとなと思い直して中古で出てくるのを待った。
 
翌年1990年にアルバム「eeney meeney barbee moe」が出る。
シングルの”三日月の憂鬱”なんかはやはり普通にいい曲なんだけど
過去のバービーの模倣、複製のようだった。
なんだか寂しい気持ちになり、
どうなんだろうなあ、と思っていたら彼らは解散してしまった。
その後何回か再結成して、今も活動を続けている。
ソロで成功したのは杏子だけだった。