家が建つ

家のすぐ近くにあった住宅街の間の少しばかりの畑の半分が駐車場になって、
残り半分に3棟の家が建った。
その向かいにあった広い駐車場は丸ごと分譲地となった。
舗装されていたのが掘り返され、間を走る道路がつくられ、宅地として整備された。
こんなにたくさん売れるのだろうか? と思っていたが
ほとんど売れて、今、それぞれ家が建てられている。
先週末、先々週末と地鎮祭のテントを見かけた。
春先に始まって半年も経たないうちにだいぶ様変わりした。
裏の方にあった工場兼住居の建物があったのも取り壊され、
3軒の住宅として生まれ変わった。
練馬区からどんどん畑が消えていくんだな、ということを思う。
 
早いものでここに住んで5年ほどか。
以前書いたかもしれないが、
妻が近所の方から聞いた話では裏手に小さな商店街があって
魚も野菜も必要なものはそこで皆買うことができて便利だったという。
僕らが引っ越してきたときにはそういう店がひとつ残らずなくなっていた。
電気屋の看板が残っているだけ。
この家の造りは以前、なんらかの商店だったんだろうなと思いながら前を歩く。
スーパーに客を取られて、店主も高齢化で店を閉めた。
 
少し離れたところに、飲食店の集まっていた通りがあって
そこも大半が店を閉めている。
スナックがいくつかと居酒屋が残るだけ。
定食屋やクリーニング屋がかつてはあったようだけど。
こういうスナックに僕が入るということもないだろう。
見知らぬ土地のスナックならば、特に賑わっている観光地のならば、
入ることができるかもしれない。
しかし地元の人しか訪れないであろうスナックだと
住み始めて5年という新参者の僕には敷居が高い。
誰かの紹介じゃないと。
そして5年間住んでみて、近所の方と会釈する以外に
年上の男性と仲良くなるということがなかった。
 
次の5年でどれだけ変わるだろう。
練馬らしさ、というものが身の回りから消えて
23区のどこか区別のつかないような住宅地だけが残される。
練馬という地名だけが残る。
それは仕方のないことか。
 
一方で数十年もしないうちに日本の家屋の1/3が空き家になるという。
税金対策などの理由があって手つかずで残したり、
持ち主不明で行政も手が出せなかったり。
 
僕もこの家にあと何年住むのだろう。
練馬区民としていつまで暮らすだろう。