先週買ったCD #89:2022/06/20-2022/06/26

 
2022/06/21: diskunion.net
ChromeChrome Flashback / Chrome Live・The Best Of」 \1100
 
2022/06/23: tower.jp
Japan 「Gentleman Take Polaroids +4」 \2934
Japan 「Tin Drum +4」 \2934
Brian Eno 「77 Million」 \2750
Taj Mahal & Ry Cooder 「Get On Board - The Songs Of Sonny Terry & Brownie McGhee」 \2860
 
2022/06/25: DiskUnion 神保町店
John Simon 「John Simon's Album」 \680
 
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Japan 「Tin Drum +4」
 
Japan の Virgin 移籍後のアルバム2作が紙ジャケで再発される、
どちらもボーナストラックが4曲追加されるというので思わず買ってしまう。
「Gentlemen Take Polaroids」(「孤独の影」1980年)と
「Tin Drum」(「錻力の太鼓」1981年)
 
2003年にもその当時のリマスターで再発された。もちろん買った。
今回買ったCDを見てみたらその2003年のリマスターだという。
「Tin Drum」のボーナストラック4曲も今見たら
2003年版にボーナスディスクという形で含まれていた。
しまった……
しかし、「Gentlemen Take Polaroids」は2003年版よりボーナストラックが1曲増えていて
何よりも大きな違いは2003年版はタイミング的にコピーコントロールCDだった。
ま、いいか。
だったら、2003年に合わせて再発された
「Oil On Canvas」(ライヴアルバム、1983年)
「Rain Tree Crow」(再結成後の唯一のアルバム、1991年)
この2枚も出してくれないかな。
 
「Tin Drum」は何回聞いただろう。
暗くて、気怠くて、退廃的で、なのにファンキー。
彼らなりの引き算の美学がこのラストアルバムで完成。
静かなアルバムという印象を受ける。
かつ、他にはない独特な音にいつも感心させられる。
ミック・カーンのブヨブヨと跳ねるベースに
ティーヴ・ジャンセンの浅くて軽いのに力のあるドラム
という意匠性の高い演奏によるところも大きいだろう。
デヴィッド・シルヴィアンの華やかさを一切拒絶するのにセクシーな声、
後に Porcupine Tree でも活動したリチャード・バルビエリの
一歩下がって音色だけを伝えるキーボードによるところも多い。
 
その名前ゆえにアジア風の音、中国を意識した音も取り入れている。
しかしメンバー自身が精通していたというよりもあくまでフェイクか。
架空の国の架空のサントラを聞くようでもある。
ジャケット通りモノクロームの世界観が広がっていて
当時恐らく最も美形とされていたシンガー
(ゆえに日本人の若い女性のファンが多かった)
デヴィッド・シルヴィアンが農家の一室と思しき空間で
箸を手に茶碗から何かを掴もうとしていて
その壁には毛沢東の写真。蓑笠もかかっている。
裸電球が灯っている。
何ともキッチュ。彼らの美意識の何たるかがよくわかる。
 
1978年に「Adolescent Sex」(『果てしなき反抗』、1978年)デビュー。
ディスコとファンクとハードロックの
2番目か3番目にいいところを持ち寄ったかのような、ちぐはぐで奇妙な音。
これはこれで無国籍。しかし、どこか拙い。
その時できることの足し算だけで生み出されたような。
デヴィッド・ボウイを目指したのに
不器用過ぎて全然別なものになったかのような。
デヴィッド・ボウイを目指したバンドを100組集めてコンテストをやったら
10位以内どころか半分より下という結果になるだろう。
キーボードもギターも前面に出まくっててベースもドラムも普通の音。
ヴォーカルも皆、自己主張しまくり。
 
それが不思議な足取りの進化を遂げて、純化の果てにこの音となっていく。
それぞれが一歩も二歩も弾くことを覚えた。
その間、ギタリストの仕事がなくなって脱退。
サポートギタリストには一風堂土屋昌巳が加わる。
YMO のメンバーとも親交を持つ。
一昨年、2020年に発売されたライヴアルバム
「From The Budokan Tokyo FM, 1982」には
矢野顕子坂本龍一高橋幸宏も参加したトラックもあった。
 
「Tin Drum」という最終形に至る一歩手前、
「Gentlemen Take Polaroids」も改めて聞き返す。
表題曲ほど暗くて後ろ向きで落ち着いたポップソングもないだろう。
ここではまだアジアではなくヨーロッパ寄り。
しかし、引き算の美学をかなり意識しているのはよくわかる。
音は空間である。
そのことにUKニューウェーブの中で最初に気付いたのが彼らなのだと思う。
 
Public image LTD. 「Flowers of Romance」と並ぶ、
ひとつの極点。