奥多摩ブックフィールドへ(中編)

土曜の続き。
奥多摩湖畔の「のんきや」で昼を食べて、また車に乗って出発。
目指す「奥多摩ブックフィールド」は2kmほどの距離。すぐ近く。
左が「麦山浮橋」方面に向かう赤い橋、
右が「奥多摩ブックフィールド」のあった旧小河内小学校という
分岐に出て右へ。
川に沿って奥に分け入っていく。
林業を営んでいるのか、古びた家が軒先にボロボロになったタオルを干している。
青梅駐在所の派出所があった。
 
入り口が分かりにくく、一度通り過ぎてしまった。
引き返し、狭い急な坂道を上がっていく。
なんで田舎の小学校はよく、こういう坂の上にあるのか。
上り切った先に校舎があった。
慎ましくもまだしばらくは現役で使えそうな立派な校舎だった。
かつての校庭が駐車場となっている。
奥には藤棚や鉄棒。半分埋まったタイヤが列をなしている。
 
校舎の入り口の向かいには気象観測記録版があった。
懐かしい。風向きを手で回転させて、気温の赤い棒グラフを伸ばす。
入ってすぐの1階職員室が「奥多摩ブックフィールド」となっていた。
中には年配の男性が3人。
失礼ながら近所のおじさんたちがここで世間話をしているのかと思いきや、
かつての出版ニュース社を切り盛りされていた方など、
出版業界でかなりのキャリアを積まれた生き字引のような方たちだった。
 
こんにちは、と入っていくと
奥多摩ブックフィールドに来たんですか?」と驚かれた。
開いているのは月に一度、第一土曜日のみ。
facebook にページを開いているが、訪れる客は毎回一組ぐらいなのだという。
なんでここを知ったのかと聞かれて、神保町の PASSAGE にチラシがあったと答える。
主宰の”本屋さんウォッチャー”「どむか」さんは僕ら青熊書店同様、
PASSAGE にも棚を持っている。
前から気になっていて、ようやく来ることができたと伝える。
あれこれPASSAGEのこと、奥多摩のこと、世間話をする。
3人は奥多摩町に住んでいるのではなく
それぞれ別なところに住んでいて、月に一度ここに通っているのだという。
 
職員室横のかつては用具室だったのだろうか、小さな部屋がライブラリーとなっていて
かつて出版ニュース社の出していた「出版年鑑」や
出版業界の仕事、歴史など3,000冊を超える本がきちんと分類されて並べられている。
収め切らず、段ボールに入ったまま本もたくさん。
貴重な資料の数々。
同じような蔵書を持っていた研究者や中小企業もかつては多かったはず。
それが埋もれいっていつか古書店に消えていく、まだ
それならまだよくてゴミとして処分されるということがほとんどだったのでは。
どこまで、どういう形でこの場所が残されていくのかはわからないが、
このような形で後世に残してくれた方たちがいてとてもありがたいと思った。
 
職員室はどむかさん初め、何人かの方たちの貴重な蔵書が並べられ、
一部の棚はどむかさんの運営する古書店
棚の上には昭和50年代からの毎年のベストセラーも年ごとに並んでいる。
昭和57年だと『窓ぎわのトットちゃん』『気くばりのすすめ』『積木くずし』など。
どむかさんが海外から集めたブックエンドがあちこちで活躍している。
猫や熊が本を読んでいる。
日本ではなかなかこういったブックエンドは製作されず、
逆に海外では日本のようなブックカバーという習慣がない、韓国ぐらいと聞いた。
 
どむかさんの扱う古書は自分の蔵書からがメインのようで
出版に関わる方でないと目に留まらないものが多かった。
またたくさん買ってしまった……
『CATALOGUE of GIFT BOOKS 2020-2021』(「本の日」実行委員会、2020年、50円)
『TOKYO EDIT #1』(ROCKET BOOKS、2009年、100円)
『中国のグルメ・ガイド』(中華人民共和国国家観光局、200円)
『50mm 高城剛 写真/文』(晋遊舎、2018年、500円)
STUDIO VOICE 特集★ニュー・テキスト スタジオ・ボイス副読本300冊』(流行通信社、1993年、300円)
『日経回廊 10 ホテルに暮らす』(日本経済新聞社、2016年、500円 ※非売品)
『東京の編集』(ピエ・ブックス、2007年、1,500円)
 
この日はささやかな台湾フェアとなっていて、
台湾で出版された本や雑誌、台湾で見つけたブックカバーやメモ帳なども売られていた。
 
せっかくの奥多摩の廃校というロケーションなので
コロナ禍が落ち着いたら来てくれたお客さんとバーベキューもしたいという。
とてもいい場所だったな。
場所柄冬になったら閉まってしまうので、秋にもう一度ぐらい訪れたいと思う。