『近畿地方のある場所について』

近畿地方のある場所について』
まだ5月半ばだけど、今年上半期一番面白かった本はこちらになると思う。
 
昨年から通ってる整体の方が怪談・ホラー好きで
腰や背中をもんでもらいながら「なんか面白いのありました?」と話す。
前回、読み終えたからともらったのが
最近話題の『変な家』と『近畿地方のある場所について』
 
『変な家』は、まあぼちぼち。
ホラーというより謎解きですね。
状況の説明してるところまでは面白かったけど、後半は謎解き一直線。
正直、そこそこ。
小説としての面白さは皆無。
版元が飛鳥新社なので『磯野家の謎』に立ち位置が似ていると思う。
 
近畿地方のある場所について』
ある地方という共通点以外に一見互いに無関係そうな怪談話
(雑誌記事、WEBのコメント、原稿前のインタビューなど)
が乱反射してどこに向かうのか皆目見当もつかない。
 
人間何が怖いって、不安定なこと、不安なことが続く、
それがどこに向かうか全くわからずに続くこと、だと思う。
そもそも悪夢というものがそう。
異様なものが突然現れるから怖い、追いかけてくるから怖い、
ではなく、本当に怖い夢は不安な状態のまま何も起きず、
何かが起こりそうなまま、ただふらふらと続くことだと思う。
 
それとあと、怖い話がどう流布するか、どう記録されるのか、
というのをたぶんかなり正確にトレースしたこと。
そこのところ、ほんとこれはうまいなーと感心した。
 
ネタばれ的な話になるけど、
後半4/5に入ってからの真相・核心への肉薄部分をごっそり削ぎ落して、
結局何もわからない、この世は理不尽なものだ、で終わっていたら
これは僕にとって生涯ベスト10の本に入ったと思う。そこが残念。
でも、ホラー好きならば十分面白い。
新耳袋』4巻のあの山の話が好きな人ならば、ぜひ。