物語を書く

こういう話

世界の果てにある寂れた港町。 空はいつも暗く、雪が降っている。 少年はその町で生まれ育ち、他の町を知らない。 大人たちも他の町に行くことができない、流刑のような町。 人々は言葉数少なく、諦めたように惰性で生きている。 幼なじみの少女がいて、二人…

幽霊船

主人公は幽霊船の中で目を覚ます。 鉛色の分厚く雲が重なり合った空。吹き荒れる嵐。 高い波がボロボロになった船に襲い掛かる。 骸骨になった船長が操舵室にいて、落ち着き払って船をどこかへと導いている。 朽ち果てた乗組員たちも無言で働き続ける。 与え…

エンディングから始まる小説

エンディングの部分から始まる小説は可能だろうか、と考える。 構成をひねって最初に掲げたクライマックスに至るために時間軸を戻していくというのではなく、 普通の小説ならばハッピーエンドなりバッドエンドなりに至って終わる、 その場面から書き始める小…

書く人、シェアする人

知人が近況を語る中に、物語講座を途中で断念したとあった。 自分の書きたいことを、と言われて他の人は出てくるのに自分は出てこなかったと。 物語とは自分が器となって自分の外にあるものを書くんだけど、その感覚を掴むのは難しい。 言い方を変えると自分…

時限爆弾

こういう話。 40近い男は長距離トラックの運転手だ。 明日から3日間の休みをとれることになったが、夕方、営業所の所長から急に 「運んでほしいものがある」「他にいないので引き受けてほしい」「今すぐ」と言われる。 とりつくしまもなく、一方的に決まる…

ルールとメッセージ

以前、物語の読者が物語に求めるものは 魅力的な「世界観」(ワールドモデル)とその中を生きる「キャラクター」に尽きるんじゃないか、 一方で「ストーリー」は奇抜なものよりも馴染みのある類型に沿ったほうが落ち着く、 ということを書いた。 世界観には…

ありきたりな話

東京の地下に「第二東京」が広がっているというパラレルワールドを考える。 光のないトンネルを掘り広げて棄民たちが住みついて肩寄せ合って生きている、という。 その中で王となる盲目の男がいる。光を必要としない。 その王国では光に依存する割合が高いほ…

冒頭を試作

昨日、3年ぶりに弟から電話があった。 LINE ではたまにやり取りしてたから、なんで今更電話? って最初は思った。 「あのさあ、兄さん」 母が、現れたのだという。 日曜、予定もなく寝そべってスピリッツを読んでいた。 そこにアパートの部屋のインターホン…

交差点

行方不明になった双子の妹を探す兄。 同居していたアパートから、ある日突然いなくなった。 犯罪に巻き込まれたのか、自らの意思で失踪したのかはわからない。 もう一年になる。 部屋の中には妹の残した服や本や化粧品の数々がそのまま残されている。 ごく普…

「ウタフクヤマ」

金曜だったか、夜たまたまつけた「ウタフクヤマ」が面白かった。 福山雅治、リリー・フランキー、蒼井優がホストということになっていて このときは是枝裕和監督、秋元康、ヒャダイン、蒼井優、広瀬アリス、広瀬すず と豪華なゲストだった。 テーマがクリエ…

世界定めと世界観

理論的、構造的に小説を書く。そのひとつとして。 前にも書いたかもしれないですが。 かつて奥田民生がユニコーン時代の最後の頃にインタビューで答えたように、 歌うときドラムの音しか聞いてないと。 同じように、人は小説を読むというとき、 その背景にあ…

漂流もの

ウィリアム・ゴールディングの『蝿の王』であるとか、 桐野夏生の『東京島』であるとか。 その原点としてのダニエル・デフォー『ロビンソン・クルーソー』 漂流物は面白い。 極限状況でどう生き残るか。 むき出しになった欲望により人間関係はどう変質するか…

死の物語性

David Bowie 死去のニュースの後、「★」(Black Star)のダウンロード数が 2700% 伸びたというニュースをどこかで見かけた。 死という物語性、ドラマ性が人々の興味を惹きつける。 物を売るならば性能・効果を直接に伝える時代から イメージの時代を経て、物…